• イナムドゥチが猪もどきなら猪で作ったイナムドゥチはどうなってしまうのか

イナムドゥチが猪もどきなら猪で作ったイナムドゥチはどうなってしまうのか

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沖縄にはイナムドゥチ(猪もどき)という豚肉を使った汁物がある。これを猪肉で作ったら猪もどきじゃなくなってしまうがどうなってしまうのだろうか。

イナムドゥチ=猪もどき

イナムドゥチは白味噌仕立ての沖縄の豚汁みたいなものですが、ほんのり甘い味噌味と豚肉などの具材の味がよくあっていて僕の中では好きな沖縄料理の中でかなり上位に位置する汁物です。もともとはお祝いの席の料理らしいのですが、たまに食堂なんかで常時出している所があって割と食べてます。

さて、このイナムドゥチ、辞書を引いてみると
昔は猪の肉を使っていたが、のちに豚肉を使うようになり、<猪もどき>が鈍って<イナムドゥチ>と名付けられたという。」(沖縄大百科事典 1983年 沖縄タイムス社)
と記されています。

つまり、イナ(猪)+ムドゥチ(もどき)が語源となっているというわけです。昔は猪肉を使っていたが、現在は豚肉なので猪もどき(イナムドゥチ)…ということはかつてのようにイナムドゥチを猪肉で作るとそれはすでに猪もどきではなくなってしまうため、皮肉なことにイナムドゥチの名前を根本から否定することになってしまいます。そう、イナムドゥチのアイデンティティの危機です。

…すごい長々書いたんですが、まぁかいつまんでお話しすると猪の肉を手に入れる機会があったのです。猪の肉でイナムドゥチを作ったらどうなるのでしょうか、というのが本日のテーマです。

 

イナムドゥチを作ろう

今回の企画をやるにあたって、3種類の肉を用意しました。左から通常の県産豚三枚肉、国頭産のイノブタのバラ肉、石垣は西表産の猪肉です。イノブタは猪と豚の掛け合わせなので、右にいけばいくほど猪に近くなっていくというわけです。

本来であれば肉の条件を揃えるべきなんですが、なかなかイノブタと猪は肉が手に入らないのでイノブタ肉は焼肉用にスライスされたバラ肉、猪肉は皮付きという条件のばらつきがありますが、手に入ったものでよしとします。それでは早速、イナムドゥチを作っていきましょう。

上記が基本的なイナムドゥチの材料です。椎茸、カステラカマボコ・厚揚げ・コンニャク・白味噌です。カステラカマボコは卵がたっぷりと入ったカマボコでイナムドゥチ以外でも慶事に使われるものです。

イナムルチこんにゃく
いなむるち用味噌

ちょっと話がずれるのですが、沖縄ではイナムドゥチ用に味噌だったりこんにゃくが売られています。なんとなくイメージとしてそんなに家庭でイナムドゥチを作ることって無いと思うのですが、売れてるのでしょうか?

話を本筋に戻してまずは各肉を煮て、豚出汁を取ります。

左から猪、イノブタ、豚肉。イノブタの肉の脂身がすごいのと普通の豚肉のダシの取れて無さそうな感じがすごいです。茹でた肉は短冊切りに。

椎茸、カステラカマボコ、揚げ豆腐は短冊切りにしておきます。

鍋にカツオ出汁と豚だしを1:1の割合で煮立てて、カステラカマボコ以外の具材を煮込みます。

具材が煮えたら、カステラカマボコを入れて味噌を溶かせば完成です。

 

イナムドゥチのアイデンティティを揺るがしてみる

さて、猪、イノブタ、豚肉でつくったイナムドゥチが完成しました。

上記のようになっています。左に行くほどイナムドゥチがモドキじゃなくなる形です(イナムドゥチじゃないのでイナと書いてますが、沖縄では猪肉のことはカマイといいます)。徐々に猪の度合いを強めていってイナムドゥチのアイデンティティを揺さぶっていきましょう。

まずは普通のイナムドゥチ。

うまい。想像通りの味です。むしろかなりおいしくできたので、たまに自宅で作ろうかと思いました。いや、イナムドゥチは本当にうまいんです。まだ食べたことがないという方も是非食べてみて下さい。

さて、続いてはイノブタ肉です。イナムドゥチですが、肉の要素の半分は猪由来になりました。イナムドゥチも「俺はひょっとしたらモドキじゃないのかも…」と思い悩んでいる事だと思います。

イナムドゥチはどうなってしまうのでしょうか?

……?

何かがおかしい。味噌の分量を間違えたのかと思ったのですが、口に広がる脂の味と、若干の獣臭さ。おいしくないわけじゃないのですが、何かがズレはじめてる気がします。ちなみにイノブタ肉は焼肉用で薄くスライスされてるやつだったのですが、薄くてもなおかなり歯ごたえがありました。肉の味もなんだか濃い感じがします。

最後は猪肉です。この段階で完全に「ムドゥチ」要素が消え、100%イナになりました(言ってて意味がわからない)。イナムドゥチも「俺はニセモノじゃない。それなのにイナムドゥチ…俺はいったい何なんだ…。」と混乱していることでしょう。ムドゥチを排除したイナムドゥチ。いったいどうなってしまうのでしょうか…!

獣くさい。

なんとなくイノブタで感じていたズレが決定的になりました。イノブタよりもはっきりとした獣臭があり、それは白味噌仕立ての汁にはあまり合っていない気がします。上品なお嬢様の家に蛮族が乗り込んできた、そんな感じでしょうか。多分猪肉には赤味噌があう、そんな気がします。

 

イナムドゥチはムドゥチのままが一番うまい


ちなみに猪肉はちゃんと保険所の許可を取ってる業者から買いました

というわけで、イナムドゥチから徐々にムドゥチ要素を取り去っていく試みでしたが、結局の所「豚肉が一番うまい」という結論に達しました。過去の猪肉を使っていたとされる頃のイナムドゥチがどんなものか記録には残っていないのですが、現在販売されてるイナムドゥチ専用の味噌は豚肉に最適化されておいしくできるようになってるのかもしれません。

ただ、イノブタ、猪については普段食べ慣れていないのでこのニオイに慣れたらまた違う感想になるのかもしれないなと少し思いました。肉単体では豚肉よりもしっかりとした歯ごたえと濃厚な肉の味がして、イナムドゥチにしなければこれはこれでうまい気がします。

ちなみに沖縄にはイナムドゥチを白味噌ではなく、すまし汁で作った「シカムドゥチ(鹿もどき)」という料理が存在します(イナムドゥチよりはかなりマイナー)。というわけで、そのうち鹿肉でシカムドゥチを作ってみたいと思いますが、ケラマジカとか食べたらつかまりますよね…。本日は以上です。

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