沖縄で唯一の百貨店、リウボウの歴史を振り返る

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那覇市のパレットくもじにあるデパートリウボウ。現在は沖縄で唯一の百貨店である。創業から69年の歴史を誇るリウボウの歴史について話を聞いてみた。

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樂園百貨店
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デパートリウボウの記事なのに樂園百貨店?その謎は記事を最後まで読めば明らかになります。
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沖縄で百貨店といえば1999年に沖縄山形屋が閉店、2014年に沖縄三越が閉店ということで現存する百貨店は久茂地にあるリウボウのみ。リウボウは1948年に設立された前身となる「琉球貿易商事株式会社」から数えると69年の歴史を誇る老舗百貨店。

知っている方もいると思いますが「リウボウ」の名前は「琉球貿易」から来ているのです。
そんなリウボウがどのように今の姿になったのか、お話を聞きつつまとめてみました。

 

はじまりは「琉球貿易商事株式会社」

今回お話をお伺いしたのは株式会社リウボウホールディングス 専務取締役 企画室室長の我那覇学さん。現在のパレットくもじビルへ移店する前、「旧店時代」の最終の入社だそうです。

それではさっそくお話をうかがっていきましょう。

- 本日は宜しくお願いします。
まず、リウボウの前身となった琉球貿易商事株式会社についてお聞きしたいのですが。

リウボウの前身は1948年に設立された「琉球貿易商事株式会社」という会社で、那覇市の崇元寺にあったと言われているのですが、正確な位置はわからないようですね。牧志にマックスバリュがあるのですが、あの近くだったようです。終戦間もない時期でまだ那覇の国際通り近辺は米軍が駐屯していたそうなので、その位置にできたのかなと思っています。


建築中の琉球貿易商事株式会社社屋
(「年表と写真に見る 50年のあゆみ」より。以下*の写真は同資料から)

- 業務としては何をやっていたのでしょうか。

自社で船舶を保有していたそうで、外国や日本本土との物資のやりとりをする列島間貿易をやっていたそうです。貿易庁の輸入物資の小売りを行う「琉貿ストアー」、外国人向けの小売店「リバティーハウス」という店舗も運営していました。


リバティーハウス(1949年)(*)

- リバティーハウス、ものすごく人が並んでますね。

リバティーハウスは米兵の家族や将校を対象とした生活用品の販売を行っていたそうです。初代が米軍の飛行機に乗ってアメリカに行って、そこでイギリス、アメリカの商品を買い付けてきて、それを米兵相手に販売するという形だったようです。商品が入荷されるとどっとお客様が集まってくる。そして2〜3日で完売して、次の商品が入るまでは開店休業状態だったという話を聞いたことがあります。

 

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ちなみに琉球貿易商事株式会社が保有していた船は、1952年に火災で沈没してしまい多大な損害を出したらしいです。
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デパートリウボウオープン

1952年 本社を那覇市神里原(かんざとばる)の琉金ビルに移転。丸金デパート2階に「リウボウ」が開店する。

- いよいよデパートリウボウのオープンです。

場所は那覇市壺屋の神里原なのですが、当時はここが沖縄一の繁華街だったそうです。


当時のリウボウの位置。現在の繁華街とはかなり位置が違う。

デパートリウボウの設立の中心となった宮里辰彦(二代目社長・会長)は東大を出られていて、銀行で働いていたんですよね。沖縄戦の後、日本全国で働いている沖縄出身者に、戻れる人は早く戻って沖縄を助けてくれ、という号令がかかったらしいんですよ。それで会社を退職し、あわてて沖縄に帰ったそうです。


リウボウ開店告知の新聞記事(*)

初期のリウボウには「OSS(オーバーシーズ・サプライ・ストアー)」という名前がついているんです。当時のリウボウの商品は全てアメリカ、イギリス製品で今のように日本の商品が世界的に良いという時代ではないですから、海外の最先端のものを売っているお店というイメージだったようです。「舶来品のリウボウ」と言われていたそうですよ。

1954年 那覇市松尾177番地に店舗を新築。2階建。


1950年代のリウボウ(*)

- そしてデパートリウボウの開店から2年後に国際通りに移転。リウボウの50周年誌を見ると当初は地下1階、3階建ての予定だったが、工事中の事故や施工業者の経営不振で2階建てになったと書かれていますが

その話は残念ながら先輩から聞いたことがないですね。60年程前の話で、社員も4世代くらい前の話なので分かる方がいないですね。


旧リウボウは今のパレットくもじのほぼ斜向い。現在は「レグザリウボウ」という複合商業施設になっている。

- 松尾時代のリウボウ(旧リウボウ)では「沖縄初」のことが随分行われたと聞きました。


1955年にリウボウで行われたファッションコンテストの様子(*)

例えばファッションコンテストですね。当時はモデルという職業が一般的でなかったために、外国人や職員の中からモデルを選別して行ったと言われています。創業の宮里はアメリカでの最先端の商売の仕方を見てきていますので、沖縄初、日本初のものは結構あったんじゃないかと思います。


沖縄初のエスカレーターとその様子(*)

あとはエスカレーター。1965年に沖縄ではじめてリウボウでエスカレーターが落成しました。当時担当した先輩からお聞きしたんですが、エスカレーターを一目見ようと行列ができてその長さはリウボウのビルを一周したという逸話も残っています。

また、旧リウボウにお越しになったことがある方は覚えているかもしれませんが、現在の場所に移転するまでエスカレーターは上りしかなかったんですよね。私が新入社員の思い出として、お客様が帰る閉店時間になるとエスカレーターを一旦止めて下りにしていたんですよ。余談ですが、私が入社当時のリウボウは火曜日がお休みで営業時間は19:00まででした。なんていい会社に入ったんだろうと思ってましたね(笑)。

そして、これは証拠がないのでなんとも言えませんが、沖縄というか日本ではじめて百貨店でバレンタインのセールをしたのはリウボウなのではないか、という話を先輩から聞いたことがあります。本土復帰前にアメリカのバレンタインをアレンジしてはじめたのがリウボウでそれが広まったのでは、という話をしていましたね。

- 旧リウボウには屋上に遊園地があったそうですが。


屋上遊園地。1964年(*)

残念ながら、私は全く記憶が無いですね。私が物心ついたときにはリウボウに行くと6階ペットショップがあったんです。そこが楽しみでした。その時は屋上の遊園地は跡形も無かったと記憶しています。

当時の屋上遊園地だと山形屋、三越さんの規模が大きかったので私は山形屋派でした(笑)。山形屋さんは電車の遊具があったんですが、たしかビルの屋上から電車の線路が飛び出していたと思うんです。どのくらい出てたかは覚えてませんが、印象的でしたね。

その頃は沖縄に大規模な遊び場というものが無かったので、百貨店の屋上や中城城趾にもちょっとした遊園地みたいなものがあったんですね。娯楽でいえば映画館も沢山ありました。

そういえば子供の頃の話でいくと、私が小学校の時は日本全国空前のプラモデルブームでして。リウボウにもおもちゃコーナーがあって、プラモデルコンテストがあったんです。戦艦ヤマトのプラモデルを作って箱に入れ、バスに乗って持っていったことを今でもはっきり覚えています。

1971年 第4回目の拡張工事が完成。地下1階、地上6階、塔屋の店舗となる


改築後のリウボウ(*)

- 旧リウボウの増床についてお伺いしたいのですが、資料を見ると塔屋だけが出っ張っているのが分かります。ここには何があったのでしょうか

塔屋中にぐるっと階段があって、倉庫みたいになっていました。新入社員の時は先輩に言われて塔屋に荷物を運んだり持ってきたりしたのですが、ものすごく暑くて高さもあるので大変でした。この塔屋ですが、先輩から聞いた話では初代のオーナーがアメリカ型のホテルと商業施設の複合施設をやりたいという構想を持っていたのだそうで、上に増築できるように塔屋だけを先に作ったということらしいです。

- なるほど。では次に地下売場についてお伺いします。通称デパ地下と呼ばれる地下売場は現在すごく充実していると思うのですが、旧リウボウ時代もデパ地下ってあったのでしょうか?

いえ、旧リウボウの頃は地下で食品は扱っていましたが、生鮮などは扱っていなかったんです。沖縄そば屋さんはありましたね。現在の場所に移転することを見越して1985年に西武グループ(当時)のスーパーマーケットチェーン、SEIYU(西友)さんと業務提携をしたんです。その流れで1987年にスーパーマーケットの「首里りうぼう」がオープンします。そうやって生鮮のノウハウを得て、本格的なデパ地下ができたのは現在の場所に移転後になります。

- そういえばデパートといえば、だいたい上の方にレストランがあるイメージなんですが、旧リウボウにもありましたか?

はい。最上階にTOPSというレストランがありました。まぁ最上階にあるからTOPSなんですけど(笑)。今の県庁側に窓があって景色がよかったですね。社員の統一集会や新年会の催しなどもそこでやったりしていました。

 

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我那覇さんはTOPSで行われたリウボウ社員の忘年会でロシアンチーズケーキというのをやって(1ピースだけ大量のタバスコが入っている)、見事当たったことがあるそうです。
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パレットくもじに移転

1991年 那覇市の再開発で誕生した複合商業施設「パレットくもじ」に移転。


パレットくもじのリウボウオープンのチラシ(*)

- いよいよ現在の位置に移転した後の話です。
新しいリウボウのオープニングは大盛況だったようですが

オープニングセールは1日10万人くらいのお客様がいらっしゃっいました。私は当時2階売場のスタッフだったのですが、前日にプレオープンがあって、当日は全国の西武グループから応援が来て対応していましたね。オープニングではパレットくもじの外壁に映像を投影したりもしたんですよ。いわゆるプロジェクションマッピングの走りだったんじゃないかと思います。

- パレットくもじから移転してから現在に至るまで、テナントが大きく変わったみたいなことはありますか?

テナントは時代に合わせた形で変わっていますが、フロアの構成的にはあまり変わっていないですね。しかし強弱が変わったりはしています。例えば昔は8階は全部子供服だったんです。そして非常に売れていました。その当時は子供服もベビー用品も全部リウボウでという感じだったのですね。

それが近年になって量販店が沢山できたので、2012年に子供服の売り場面積を縮めて、雑貨のFrancfranc(フランフラン)さんと無印良品さんに入って頂きました。そのような形で時代に合わせた拡縮はしていますが、フロアの位置づけが変わっている、ということはないですね。

- 現在は夏に屋上でビアガーデンなども開かれていますが、他に変わった催事などはありましたか?

そうですね。パレットに移ってきてからは婦人服だったり物産展のような定番の催事も行いましたが、まさに百貨店の催事場は美術館にも動物園にもなるということで、オープン当初話題になったエッシャー展。ねこ展や海の生きもの展などさまざまなイベントが行われました。近年開催したチームラボの「学ぶ未来の遊園地」は日本初開催のイベントとして注目を集めました。

また、2013年まであったリウボウホールは沖縄の音楽や映画、落語、アート展まで文化を発信する小ホールでした。中江裕司監督の「ナビィの恋」は連日満員で「チケットが買えない映画」として社会現象にもなりましたね。

夏の風物詩、盆踊り大会などもやりましたね。この久茂地界隈は住んでいる方も少なくオフィス街ですが、夏場のイベントも必要ではということで櫓(やぐら)を組んでですね。その期間中は社員も浴衣を着て接客をしたりもしました。これは3年前に一旦終了してしまったのですが、再開を望む声も頂いております。

 

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ちなみにパレットくもじには映画館が入ってますが、構想段階ではそのスペースでペンギンを飼育するという計画もあったのだとか!?
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リウボウのこれから

- 最後にリウボウのこれからについてお伺いしたいのですが。

百貨店とはおじいちゃんおばあちゃん、お父さんお母さん、そして子供さんの3世代で楽しんでお買い物をして頂く、またお買い物だけではなく訪れるだけで楽しめる場所である、ということが大事なのではないかと思っています。

また量販店との違いとして、少し値段は張りますが、さらに安心・安全でよいものが手に入りますよという点だと思います。安心・信頼をフィルターとしてかけながら、お客様の生活をよりよくしていくために時代にあわせた商品の提供、サービスの提供をしていくということでリウボウはいくらでも変化できるのではないかと思っています。

実はリウボウでは現在「樂園百貨店」という新たなコンセプトでリニューアルの計画をしております。「デパートハイ」「リゾートハイ」「トラベルハイ」という3つのキーワードでリゾート感あふれる、独自の世界観を展開する百貨店にしようという構想なのですが、それにあわせて現在リミテッドショップの設置を皮切りにどんどん変わっていく予定です。そちらもご期待いただければと思います。

- 本日はありがとうございました!

 

というわけで、駆け足になりましたがリウボウの69年の歴史についてのインタビューでした。まだ琉球政府すらない終戦から始まったリウボウの歴史は、琉球政府の発足や沖縄の本土復帰など様々な世代わりを経て現在に至ります。リウボウは数多くあった百貨店の中で、地元出資のみで作られた百貨店。そしてその地元の百貨店が、現在沖縄で唯一の百貨店となっているのは素晴らしいことではないかと思います。

そして最後に登場したキーワード「樂園百貨店」。これからリウボウがどのように変わっていくのかが楽しみです。

 

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