2017.09.13

伊江島で作られる「ラム酒」の魅力を調べてみた

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「海の男たちが飲むお酒」というイメージが強いラム酒。世界各地に40,000もの種類があるといわれていますが、沖縄県北部の小さな離島・伊江島でも作られていることをご存知でしょうか。

伊江島にある「伊江島蒸留所」を訪ねてみる

沖縄本島の本部港からフェリーで約30分。「タッチュー」の名前で親しまれる城山(ぐすくやま)で有名な、伊江島にやって来ました。

この日はあいにくのお天気でしたが、そんな中、伊江島物産センター伊江島蒸留所の知念さんと待ち合わせ。数年前から伊江島で作られ始めたというラム酒の工場を案内してもらえることになりました。

知念さんの運転で、伊江港から車で5分の場所にある「伊江島蒸留所」へ移動します。
この立派な建物は、もともとサトウキビの「バイオマスエタノールテストプラント」だったのだそうです。アサヒビールが2006 年から2011 年まで、砂糖を作る際に出る副産物から石油の代わりになる再生可能エネルギーを作り出す研究をしていたそう。研究を終えた後、建物や機械を譲り受け、ラム酒製造用の設備を加えました。

伊江島蒸留所設立までの経緯を、知念さんから詳しく伺っているのですが、そちらの紹介は後ほど。まずは、ラム酒製造の工程を教えていただきます。
そこで私は、ものすごい技術を目にすることになるのです...!



伊江島蒸留所のラム酒造り

ラム酒をどうやって作るのか、みなさんご存知でしょうか?
それぞれの酒造所によって細かな製法は違っているはずですが、一般的な作り方はこうです。

サトウキビから砂糖を作る → その際に副産物・糖蜜ができる → 発酵 → 蒸留 → 貯蔵・瓶詰め

世界のラム酒の95%は、「トラディショナル・ラム」と呼ばれ、砂糖を製造する時に砂糖にならなかった副産物から作られます。

それに対し、伊江島蒸留所のラム酒は「アグリコール・ラム」。砂糖を造ったあとの副産物からではなく、サトウキビから抽出した純粋なサトウキビジュースから作られています。そう、とてもとても贅沢なラム酒なのです!
さらに、日本国内でアグリコール・ラムを作っているのは、南大東島と伊江島だけ。おそらくトラディショナル・ラムに比べてコストがかかるので、多くの場所で作っているという訳ではないのですね。そういった意味でも、とても珍しくプレミアムなラム酒です。

ラム酒の原料はサトウキビ。農業や漁業が盛んな伊江島でも、もちろん栽培されています。
1月〜3月に収穫されるサトウキビを買い付け、そこからサトウキビジュース(搾り汁)を抽出します。

昔は左の写真のように1本1本絞り出していたそうですが、現在はそんなことはしていません。伊江島蒸留所では、右のような大きな機械を使って1回で2トンずつ仕込みをします。
「こんなゴツい機械でするのか」と驚いていたのですが、本格的な製糖工場のものに比べると、オモチャのような大きさだそうです。1トンのサトウキビを絞るのに、半日ほどかかります。

搾る機械に近付いてみると、吸い込まれそうな大きな口。

蒸留所の内部に入ってみて、またびっくり!
最初に案内された部屋の中では、パイプだらけの巨大な機械が動いていますが、このパイプ、一本一本全自動で洗えるんですって!そのため、常にクリーンな状態でお酒造りをしています。

こちらが発酵タンクです。中にサトウキビジュースを入れ、2〜3日かけて発酵させます。

そして、蒸留器で約60 度のラム酒を抽出します。
蒸留の時は、初留・中留・後留という3つに分けますが、ラム酒の製造には一般的に真ん中の中留部分だけを使うのだそうです。そのため、2トンから作れるのは720mlボトルで約200本、1トンからは約100本!

ステンレスのタンクに貯蔵して無色透明のホワイトラムを作っていきます。やっぱり贅沢なお酒なのですね!



さらに伊江島蒸留所の秘密に迫ってみます!

さて、ここからは、伊江島蒸留所と「Ie Rum」について、知念さんにいろいろ質問を投げかけてみたいと思います。

ー伊江島でラム酒を作ることになった経緯を、もう少し詳しく教えてください。

(知念さん)「2011 年にバイオマスエタノールの研究が終わった後、伊江村とアサヒビールは残された建物の跡地を何とか利用できないかと協議しました。そこで、アサヒビールから『既存の建物を一部改造したら、工業用のエタノールではなく飲料用のアルコール、つまりお酒を造ることができるのではないか』と提案があがりました。
伊江村は、もともと水資源に乏しく水田がありません。なので、昔から泡盛製造所がなく、お酒に関しては本島からの輸入に頼っていました。もし伊江島で地元のお酒ができるのであればこれほど魅力的なことはない、伊江島の地酒工場として跡地利用していこうではないかというところからスタートしました。」

ー知念さんも、最初からラム酒作りに関わることになっていたのですか?興味があったのですか?

(知念さん)「工場を整備するうえで問題なのが、酒造免許と造り手です。 免許を取得する時に一番重要なのが、酒造りを任せられる人材問題でした。
自分は、もともと沖縄本島で泡盛製造経験(酒類製造経験)があったんです。伊江島出身なんですが、ちょうど伊江島へのU ターンということも考えていた時期に、伊江島での酒造りの話を聞いて。すぐ、伊江村役場に問い合わせました。そうしたら、とんとんと話が進んで、2009 年ラム酒製造免許取得に動き出したんです。」

ー地元の方々が中心となって作られる、伊江島のお酒。とても素敵な事業ですよね!
今度は、製造工程のことを教えてください。先ほど紹介してもらった発酵タンクのことです。サトウキビジュースに酵母を入れて発酵させるだけなら、あんなすごい機械を使わずに普通のステンレスタンクでもできそうなのですが、何か理由があるのでしょうか?

(知念さん)「実は、伊江島では1年中ラム酒作りをしているんです。
サトウキビの搾り汁って保管がきかないんですね。絞って直後は糖度が18%。一番甘いスイカやメロン、ぶどうと同じくらいなのでとても腐りやすく、いくら殺菌しようが冷凍庫に入れようが1週間もたないです。だから一般的に、アグリコール製法のラム酒は、新鮮なサトウキビが採れる地域と収穫時期にしか製造できません。
でも、伊江島蒸留所にはサトウキビジュースを保管できる技術があるので、年中アグリコールラムの製造が可能です!このような製法は、日本で伊江島が唯一です。」

ーなるほど!では、先ほどの発酵タンクには、何かしらの秘密があるということなのですね!
これは本当にすごい技術ですよね!

ー伊江島蒸留所で作るラム酒は透明な「クリスタル」と、琥珀色の「ゴールド」がありますよね。
この違いを教えてください。

(知念さん)「ステンレスのタンクに貯蔵すると、無色透明のホワイトラム『クリスタル』になります。樽に入れると琥珀色の『ゴールド』ができます。もともとはウイスキー樽で、最低でも50年は経っているのではないでしょうか。」

(知念さん)「このマークの真ん中の三角模様は、『タッチュー(城山)』です。四隅に向かって伸びている模様は、テッポウユリをモチーフにしていて、テッポウユリに囲まれた伊江島をイメージしています。」

ーへえ!何気なく見ていたこのマークにも、そんな深い意味があったんですね!
ちなみに、この商品名にも意味があるのでしょうか?

(知念さん)「名前の『Ie Rum(いえラム)』は、伊江島の名前を知ってもらいたいという願いから付けたものです。その後の『Santa Maria(サンタマリア)』は聖マリア様の意味。 テッポウユリはヨーロッパにリュウキュウユリとして紹介され、瞬く間に広まり、宗教行事の時にはマリア様のシンボルとしても使われたそうです。伊江島のこの『Santa Maria』というラム酒も、テッポウユリのように世界中に渡ってインパクトを与えていきたいという願いも込めています。
これまでのラム酒は、男性的なイメージのラベルが多いように感じていたんです。そんななか、女性にも気軽に飲んでもらえるような味にしたかった。だから、あえて女性の名前や女性の透明感を出すラベルデザインにしています。」



まとめ

伊江島にある伊江島蒸留所と、そこで作られるラム酒「Ie Rum Santa Maria」についていろいろお話を伺ってみたところ、とても丁寧に作られている贅沢なお酒だということが良くわかりました。
実際の工場見学の際には、さらにあれこれお話を聞かせていただき「ほほーー!」の連続だったのですが。みなさんもぜひ、現地に遊びに出かけて、知念さんや工場の方々から直接お話を聞いてみてくださいね!

「沖縄でラム酒!?」と思う方もいるかもしれませんが、サトウキビが原料ということを考えると、泡盛と同じくらい身近なお酒だと思います。
ストレートやロックでいただくのもいいですが、カクテルのベースとしても適しているラム酒。実際、昨年の「産業まつり」や「離島フェア」では、オシャレな「Ie Rum Café」のテントでモヒートやカイピリーニャなどカクテルを振る舞っていました。今年もやって来るのかな!?今から楽しみで仕方ありません。

お話を聞かせていただいた知念さん、本当にありがとうございました!

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