2017.11.01

小さい頃は皆可愛かった?稚オニヒトデを探す旅

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サンゴを食べ荒らすといわれているオニヒトデ。そんなオニヒトデの幼少時代「稚オニヒトデ」を探す調査のお誘いを受けたので行ってみた。

オニヒトデは猛毒を持ち、サンゴを食い荒らす悪者のイメージで有名ですが小さい頃はサンゴを食べない時期もあり、大量発生しなければ大食いではないそうで、まだまだ謎が多い生物です。

そんなオニヒトデの幼少時代「稚オニヒトデ」を探す調査のお誘いを受け、よくわからないまま調査に同行しました。

今回協力いただいた稚オニハンターのみなさまです。

左側が一般財団法人環境科学センターのオニヒトデ好きな北村さん、真ん中が今回の仕掛け人、オニヒトデを長年研究し、今年で30周年を迎える有限会社コーラルクエストの岡地さんです。実は隠れDEEokianwaファン。その右側がいつも冷静な一般財団法人環境科学センター山川さんです。

 

まずはオニヒトデを知ろう

まずはオニヒトデについて知るために一般財団法人環境科学センターの研究室に。


研究室の稚オニヒトデ水槽

オニヒトデは1970年代には卵から成体までの成長速度など基本的なことはわかっていたものの、海中での研究はそこまでに進んでいませんでした。そんな中、ある学者さんが1980年代に稚ヒトデを発見。どんな場所にいるかについて判明したのですが、それ以降も野外での生態はまだまだ謎が多い生きものです。

研究室の稚オニヒトデ(サンゴ食事中)
研究室の稚オニヒトデ(顕微鏡撮影)
(写真提供:(財)沖縄県環境科学センター北村氏)

今回探し出す稚オニヒトデの姿を拝見。北村さん曰く、サンゴの上に乗っているのはだいだい1歳ぐらいのオニヒトデだそうで。この頃にはすでにサンゴを食べているのだそうです(ご飯のサンゴは恩納村から養殖サンゴを分けていただいているらしい)。


(写真提供:有限会社コーラルクエスト)

引き続き岡地さんにもお話をうかがいます。

オニヒトデはクラゲやウニの仲間で、雌雄別々。卵は何百、何千万と多く生みますが、受精卵後の海面を漂うプランクトン幼生時代は他の生き物に結構食べられてしまうのだそう。上の受精卵の写真の実サイズは0.2mm。とても小さいサイズです。

卵から誕生したオニヒトデは海中を浮遊しながら姿を変え、サンゴの近くに着底。着床しても数日間は食事をとらずじっとしていて、10日後くらいからやっと食事を取れるようになるのだとか。


サンゴ藻を食べる稚オニヒトデ(写真提供:有限会社コーラルクエスト)

そして稚オニが最初に食べているのは石灰藻の仲間のサンゴ藻類というものでサンゴではないのだそう。半年くらいでサンゴを食べ始めるけど、まだ体が小さく十分に発達していなかったりして、サンゴの刺胞でやられてしまったりもするそうです。

一通りオニヒトデについての話を聞いて、いよいよ稚オニ探しの旅のスタートです。

 

そして彼らは稚オニ探しに海へ向かった


海バックに立つダイバー姿の3人

現場の海に到着。多少うねりがありますが、稚オニ探しには問題なさそうです。


オニヒトデグッズ

一般財団法人環境科学センターの山川さんに稚オニ捕獲グッズを紹介してもらいます。暗い所にいるので探すのに必要なライト、大きさを計測するスケール、採るのに使うピンセット、オニヒトデを入れるケース、これらを洗濯ネットに入れて持っていくそう(なぜ洗濯ネットがブラジャー用なのかは追求しない事に)。


キラ目の岡地さん

振り返ると岡地さんが少女漫画のキラ目の姿に。今日探すサイズは大きくてもまだ5㎜程度なのでよく探せるようにという装備らしいが、その姿はどうなんだろう。


捜索中の岡地さん

今回はビーチから海へ。日頃運動をしていない私はポイントに到着した時点でヘロヘロに。気を取り直して岡地さんの後を必死に追います。


稚オニヒトデの食痕(中央薄紫のものが稚ヒトデ)
写真提供:有限会社コーラルクエスト

稚オニを探すにはオニヒトデが食べた後の「食痕」を見つける事。ピンク色のサンゴ藻であれば食べ痕が白っぽくなるので結構目立ちます。食痕がオレンジ色だったら最近稚オニが食事した直後なので発見の確率が高いとの事で頑張って捜してみました。

岡地さんに手招きされ、ピンセットの先を見ると「いたー!」それにしても小さいぞ!5㎜程度の稚オニは肉眼では判別つきにくいです。先ほど紹介された岡地グッズの便利さが今わかりました。


ピンセット先のオニヒトデ

岡地さんがどや顏で稚オニをケースにイン。


どや顏の岡地さん

沖縄環境科学センターチームも続々見つけます。


稚オニと食痕
写真提供:一般財団法人環境科学センター

ライトが当たっている中央部分にいるのがお分かりいただけますでしょうか?

オニヒトデ以外にもサンゴを食べること(食べる量が違いますが)で知られるマンジュウヒトデも見つけました。小さいころは丸くなく、星型なんですねぇ。

マンジュウヒトデ(子供)約5㎜
マンジュウヒトデ(大人)約20㎝


捕獲された稚オニとマンジュウヒトデ

結局わたしは収穫ゼロ。敗北感満載で捕獲された稚オニ達を撮影しながら反省会。


反転している胃袋が見えてるオニヒトデ
写真提供:有限会社コーラルクエスト

岡地さんに稚オニを探すコツを聞いてみると、オニヒトデを探すときは基本的にはひたすら白くなった食痕を探すのだけど食痕に似た「擬食痕」もあるので判断しにくい事もあるらしい。今回の稚オニ探しはサイズも小さい事もありちょっと大変でしたが「まぁ、慣れですね」とのこと。

「少し成長している次回の調査もチャレンジしますか?」とちょっと得意げに言われてしまいました。

 

まだまだ謎が多いオニヒトデの生態


乾燥加工された大小オニヒトデの標本

探索後、沖縄県環境科学センターの研究室に戻り北村さんの渾身作、乾燥標本の大小オニヒトデを見せてもらいました。かなり大きさに違いがあることがよくわかります。

最後にオニヒトデについて岡地さんにお話をうかがいました。

 

― さっきの稚オニ探しも調査の一環なんですか?

岡地さん:オニヒトデの研究はずっと昔から続いていて、様々な人が関わってきています。大量発生しなければ、成長の速いサンゴを食べる事で成長の遅いサンゴの生育する場を作るなど、海の生態系の一部を担っているだけなんです。

 

― 各地でオニヒトデ駆除が行われていますが、これは必要なことなのでしょうか?

岡地さん:大量発生のメカニズムがわからず、根本的な対策がとれない現在、サンゴを守るためには駆除という手段をとるしかありません。ただ捕るだけではなくて、恩納村でやっているように、産卵期前に集中駆除をして受精卵を減らすことと、同じ場所で徹底的に何度も駆除をしてサンゴが食べられる量を減らすことが大事です。オニヒトデは猛毒を持つので、一般の方は触らないようにしていただきたいですね。


群がってサンゴを食べるオニヒトデ

― 大量発生の原因は分かっているのでしょうか?

岡地さん:1972年~1977年にかけて本島のほぼ全周で大量発生が起きて、その後、1980年代~1990年頃まで特に西海岸で慢性化していました。1990年~1995年まではほぼ収束していましたが1996年にまた大量発生しました。

― その後1998年にサンゴの大規模な白化現象が起き、慢性的に各地で大量発生が起きているんですね。原因は本当になんでしょう?


サンゴを食べるオニヒトデ

岡地さん:おもにオーストラリアでの研究で、水質悪化によって幼生の餌が増えたことが大量発生の引き金だという仮説があり、沖縄県でも同様なメカニズムか県事業で研究を行って、なにがアヤしいかはだいたいわかってきました(オニヒトデ大量発生のメカニズムとその対策)。
今日取材で付き合ってもらった稚ヒトデの研究は、県事業のもう一つの柱である大量発生予測のためでもあります。このへんの詳しいことは11月に開催されるシンポジウムで発表予定です。

― そうか、今日の調査はある意味宣伝ですね?
沖縄の某テレビの人気ヒーロー物に登場する「オニヒトデービル」も緊急参加するとか!

岡地さん:いや、ネタばれでしょう。(笑)

― 本当に謎が多いオニヒトデですが、新たに解明された事がシンポジウムで発表されるのですか!期待しています!今日はありがとうございました。

 

というわけでオニヒトデのシンポジウムが開かれます

今回の取材で、サンゴを食べる悪者のイメージは実はちょっと違うかもしれない気がしはじめました。小さい稚ヒトデは可愛いですが、あっという間に成長し2年で放精、放卵ができるようになるらしいです。オニヒトデの生態、大量発生の原因などを調べていくことでオニヒトデとサンゴの共生も夢ではないのかもしれません。

さて、というわけで以下オニヒトデのシンポジウムの告知です。

オニヒトデ総合対策事業シンポジウム
「オニヒトデ大量発生のメカニズムとその対策」
〜これでまでにわかったことから私たちに何ができるか考える〜

日時:2017年11月5日(日)14:00〜17:30(開場13:30)
場所:沖縄県立博物館・美術館 博物館講座室
定員100名なので、事前申し込みがオススメです。(席に若干余裕あり)

HP: https://www.okinawa-sango-info.com/sym/cots2017.html
E-mail: cots@okinawa.info
Fax: 098-875-1943

E-mailと Faxでお申し込みの方は
表題は「オニヒトデ総合対策事業シンポジウム参加希望」と記載し、代表者名、参加人数、連絡先(メールまたは電話)をご記入ください。

問い合わせ先:沖縄県環境科学センター
098-875-5208(担当:赤嶺さん、當間さん)

シンポジウムでは来場者からの質問も受け付ける時間もあるそうなので、疑問に思った事を聞いて見るいい機会だと思います。オニヒトデの専門家がこんなに集まる機会も少ないので、期待が高まります!

興味のある方はぜひ足を運んでみて下さい。

 

編集追記

乾燥標本
乾燥標本を食べた犯人

この時採取した稚オニヒトデを乾燥標本にしていただいたのですが、なんとライターの飼い猫が食べてしまうという事件がおきました!1つだけなんとか残ったのでこちらでご紹介したいと思います。北村さん、すみません…。

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