2016.11.04

【大人の社会見学】沖縄本島唯一の鰹節工場(後編)

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沖縄本島に残る最後のかつお節工場に潜入。後編は実際のかつお節づくりの様子を工程を追ってお届けします。

本部漁業協同組合の仲宗根哲也さんへのインタビューを中心に、かつお節づくりについて概要をお届けした前編に引き続き、本日は後編。実際のかつお節づくりの様子をお届けしてまいります。

インタビューの行われた10月初旬から約二週間後、再び本部漁業協同組合さんにやってきました。
時刻は朝の8時30分。かつお節工場の朝は早いのです。


おはよう本部の海!
 

解体

早速、本部漁業協同組合の隣の建物にある工場に向かうと、既に作業が始まっていました。

ふと足元を見ると、

血の海。

そして、目の前には、


わりと生々しいのでモザイクにて失礼します

カツオの生首。

・・・しょっぱなから度肝を抜かれてしまいましたが、これがかつお節づくり最初の行程となる解体作業です。

前編でご説明したとおり、かつお節の原料となるカツオはすべて鹿児島産。
冷凍で運ばれてきたものを前日から丸一日水につけて解凍し、解体していきます。

解凍中の鹿児島産カツオ
かつお節にするにはこのぐらいの大きさが必要

この日作業場にいらっしゃったのは男性4名、女性4名の合計8名。
まず、カッターの機械を通して頭を落とし ⇒ 腹側に包丁で切れ目を入れ ⇒ 腹皮を切り取り、内蔵を取り出す ⇒ 背びれと尻尾を落とし ⇒ 煮籠(にかご)に並べる、といった具合に流れ作業で行われます。

ギロチンカッター
腹の切れ目から内蔵を取り出していく
切り取られた腹皮(奥)と背びれ(手前)
取り出した内蔵は足下のコンテナへ
作業台の上をスルスル泳ぐように解体されていく
あっという間に胴だけの状態に

カッターの機械の稼働中はモーター音で会話が聞き取れないほどですが、ことばを交わさずとも絶妙のチームワークで次々とカツオがさばかれていきます。


チームワークたるや!

原料のカツオが入った青いコンテナが空っぽになると、表からフォークリフトで新たなコンテナが運び込まれてきました。
解体作業は8時30分前にはじまり、すべて終了したのは9時30分過ぎ。約1時間でだいたい7〜800匹のカツオを毎日さばいているそうです。いやはや、お見事。
 

煮熟(しゃじゅく)

解体されたさきほどのカツオがみっちりと並べられた煮籠を重ね、最後にもういちど水洗い。

煮籠をウインチで吊り上げ、お湯の中に完全に沈めます。これは男性2人がかりでの作業。

ボイラーのスイッチを入れるとゴゴゴゴ...という轟音とともに、どんどんお湯の温度が上がりはじめました。熱されることで工場内にグワッとカツオの濃厚な香りが充満します。

煮熟時間は約2時間。この時間を利用して別の作業に入ります。
 

腹皮の加工

解体作業が行われていた加工場とは別棟にある作業場にやってきました。
ここでは女性チームがさきほど切り分けた腹皮を真空パックにする作業中。

ちなみに腹皮とは沖縄方言で「ハラゴー」。このほうが耳馴染みのある方も多いかもしれませんね。
一定量ずつ袋に入れて真空パックにしたあと冷凍保存し、釣り餌にするのだそう。
あれ?ハラゴーといえば天ぷらにしたり酒の肴としても美味しく食べられる部位なのでは?と尋ねると、いちおうこれも食べられはするけど、鹿児島で水揚げされた後そのまま冷凍されているので、塩辛くなっていて美味しくないのだとか。
「でも釣り餌としては上等ですよ!これで金目鯛なんかも釣れるって聞いたことあります。」とのこと。


関係ないけどおばちゃんのシャツがかわいくて釘付けになりました

「これなにか分かるね〜?」と見せていただいたのは、なにやら臓物のようなもの。
そういえば解体で内蔵を取り出す際に、これだけ捨てずに選り分けていました。


つやつやキラキラ美しい

「これはね、ウームンとミームンさ。ウームンは精巣でミームンは卵巣。こっちは釣り餌じゃなくて自家用ね。茹でてからニラなんかとチャガチャガーしてチャンプルーで食べたら美味しいよー。」

なななんと、精巣と卵巣のチャンプルー!?
普通の食堂なんかでは決して出てこない幻の味。いったいどんな味がするのでしょう。
改めて、沖縄家庭料理の奥深さに感服です。「チャガチャガーして」という擬音語もそそります。
 

かつお節の並べ替え

女性たちが腹皮の加工をしているのと同時に、工場内では前日までに作業した分のかつお節の並び替え作業が行われていました。

後の工程で出て来るのですが、工場内にある”燻乾式魚類乾燥機”で焙乾(ばいかん)することによって縮んだかつお節を、煮籠内の位置を入れ替えたり上下を返したりする作業です。
焙乾は一度で終わりではなく何度も繰り返し行い、表面に浮き出てきた油分などで乾燥具合を見極めるのだそう。熟練した職人にしかできない匠の技です。


焙乾後のかつお節の表面にはタールがついているので真っ黒
 

茹で上がり〜冷却

腹皮の加工やかつお節の並び替えを行っているうちに約2時間が経過。いよいよ茹で上がりです。

再びウインチを使って釜から取り出します

工場内にもうもうとたちこめる湯気。カメラのレンズが一瞬で曇りました。
そして、なんともいえない美味しそうなカツオの濃厚な香りがもわわわわ〜ん。思わずよだれが湧いてきます。


つまみ食いしたい

熱湯からあげたばかりのあつあつのカツオ、勿論すぐに作業はできないので外気と工業用の巨大扇風機の風で自然冷却を行います。

一旦、ここで一時間の昼休み休憩を挟みます。
ちなみにおばちゃんたちはみんな近所なので、昼ごはんはいつも家に食べに帰っているそうです。
 

皮取り、骨取り

午後の作業は13時からスタート。粗熱のとれたカツオの皮や骨を取る行程に入ります。

茹で上がったカツオを手にとり切れ込みから指を入れると、ぱかっと身がきれいにふたつに割れました。
太い中骨を取り除き、手で表面をざっと撫でると余分な皮がはがれます。

みなさん慣れた手つきでサクサク作業を進めるので簡単に見えますが、身をふたつに割るときに指を入れるところを間違えるとボロボロに崩れてしまったり、骨を取るときにひっかかってしまったりするため、実は細かなコツが必要な作業なのです。

このあとは「かつお節」を作る行程と「なまり節」を作る行程に分かれていくのですが、なまり節に加工するカツオはさらにひとつひとつ毛抜きで丁寧に骨をとっていくのです。これもまた集中力の要る大変な作業。
 

焙乾(なまり節)

次に、なまり節用に身を焙乾(ばいかん)していきます。培乾とは、文字通りいぶして乾かすこと。

なまり節の焙乾は加工場の裏手にある赤レンガ造りの建物で行われます。
この建物は昭和52年に完成したもので、今なお現役で使われているのです。

思わず見とれてしまう佇まい。めちゃくちゃかっこいいです。

大まかに骨をとった身を木製のせいろのようなものに並べ、下から薪で燻していきます。

生産量が多かった頃は、二階、三階までびっしりとカツオが並べられ、同じ造りの隣の部屋も含めてフル稼働していたのだそう。それを想うと今は少し寂しい感じですね。

火加減を調整したり場所を入れ替えたりしながら1時間ほど燻していきます。
 

焙乾(かつお節)

次はかつお節用の焙乾行程。
解体や煮熟を行った同じ加工場内でひときわ存在感を放つ巨大な箱のような機械、それが焙乾機、正式名称は”燻乾式魚類乾燥機”です。

煮熟後、皮と骨を取り除いたカツオを再び煮籠にきれいに並べ焙乾室の中へ。

14時50分、火が入りました。

薪の様子を見ながら火加減を調整し、100度を保ったまま約5時間燻していきます。
次に扉を開けるのは翌朝。

なまり節と違い、かつお節の焙乾は数日間かけて何度も何度も行うため、回数を重ねるごとに水分が飛んで身はどんどん小さく、そして表面のタールが黒くツヤツヤとしてくるのです。

これがかつお節とは、にわかに信じられないようなビジュアルです。
 

整形、袋詰め(なまり節)

なまり節の最終工程は整形と袋詰め。

午前中に腹皮の真空パックを行っていた作業場に再び女性チームが集合。
レンガの建物で焙乾を終えた身を整える、整形と呼ばれる作業に入ります。

前の行程で取りきれなかった小骨や余分な部分を、包丁と毛抜きでさらに丁寧に丁寧に取り除いていきます。
「このあと真空パックにするから、尖った部分があったら袋に穴が開いてしまうでしょ。」
楽しげにユンタクしながら(ちなみに地元の方言なので私には到底聞き取れませんでしたが)慣れた手つきであっという間になまり節が仕上がっていきます。


整形後のなまり節。なんと美しいのでしょうか。

真空パックした後、煮沸消毒してなまり節の完成です。
このなまり節は『焼なまり節』として主に町内の商店などで販売される他、オキハムの製品沖縄もとぶのかつおめしや、なまり節入りあんだんすーなどでも使われているそうです。
 

削り、袋詰め(かつお節)

そして、かつお節の最終工程、削りと袋詰めです。

作業場は漁協の建物一階奥にある一室。「鳥羽式花かつを削節機械」というレトロな削り機が置かれていました。ぐっとくるデザインです。

構造としては単純で、スイッチを入れると刃がのついた円形の部品が回転して横の穴から入れたカツオ節を削り、下から出てくるというもの。
かつお節は表面のタールや細かな骨などもついた「荒節」の状態で削り機に入れるのですが、下からはきれいな削り節が出て来るのでまるで手品のようです。鳥羽式すごい。

削られた途端、花が開くようにふわっとあたり一帯に漂う良い香り。日本人で良かった。

袋の口を圧着して完成です。長期間風味が損なわれないよう、不活化ガスを充てんした気密容器が使用されているそうです。

いちばん左のパッケージが一般店頭に並ぶ200gの商品ですが、ほとんど町内の一部商店で出回るのみで町外で販売されることはあまり無いそう。本部漁業協同組合に行けば1袋から購入することが出来るので、「味わってみたい!」という方は是非本部へ足を運んでくださいね。
 

おわりに

というわけですっかり長くなってしまいましたが、沖縄本島に唯一残るかつお節工場に一日密着して作業の様子をお届けしました。

長年大事に使い込まれた美しい機械や道具。細やかな手作業。製品へのこだわり。
沖縄の貴重な伝統的食文化のひとつが、今もこうしてしっかり残っていることに感動しました。

作業中にもかかわらずいろいろと説明してくださったり取材にご協力いただいた本部漁業協同組合のみなさま、ありがとうございました。
どうかこれからも、本部町産のかつお節を後世に伝えていってくださいね!
 

<取材協力>
本部漁業協同組合

〒905-0213 沖縄県本部町字谷茶28番地
電話番号:(0980)47-2500/4240
ウェブサイト:http://motobu.jp/
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