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【連載】ハブでも分かる!?遺老説伝 Vol.26
『ハブでも分かる!?遺老説伝』とは
『遺老説伝(いろうせつでん)』は1743年から1745年にかけて琉球王国の正史として編纂された『球陽(きゅうよう)』の外巻で、各地の御嶽や行事の由来、珍しい出来事などを首里政府が各地に命令を出して集めたものとされています。
当連載『ハブでも分かる!?遺老説伝』は、"ハブでも分かる" をコンセプトに、原文(漢文)をそのまま読み解くには難解すぎる『遺老説伝』を、沖縄出身の芸大生・吉元あきこが漫画で描き下してみる、という試みです。ただ、本当にハブでも分かるかどうかはハブのみぞ知るので悪しからず。
*当連載の内容はすべて史実というわけではなく、フィクションが大いに含まれていますのでご了承ください。
夫人の仇討(ふじんのあだうち)
むかし、米次按司(こめしあんじ)という人が、米次城主としていました。
その夫人は性質もしとやかな上に、人にすぐれた才気と、美貌の方で、この世に又といないくらいの美人でした。
ある日、我瀬之子(がせのし)という若者が、ひよつくりこの夫人を見て、邪(よこしま)な思いを寄せ、よからぬたくらみに日夜悶々としていましたが、やがて一つの考えを思いつきました。
我瀬之子は按司の居城に行き
「今日は空に一点の雲もなく、海は静かで風は清く、鴎(かもめ)は砂の上をかけまわり魚は波間におどっています。この絶好な日和(ひより)は、お城の中より、海に行って魚をとって楽しく遊ぼうではございませんか。」
と言葉巧みに誘いますと、按司もこの申出を喜び大賛成いたしました。
ところが、そばから夫人が
「私は昨夜(ゆうべ)の夢見が非常に悪うございました。おそらく舟を覆(くつが)えしてお溺(おぼ)れなさるかも知れません。海に出て遊ばれる今日のおくわだては、どうぞお止(や)めになった方がよろしゅうございます。」
と熱心に按司をお諌(いさ)妙になりましたが、按司はどうしても聞いてはくれませんでした。
我瀬之子とつれ立って海に出た按司は、漁に無中になってしきりに網を打ちますので、体はすきだらけでした。
我瀬之子は隠(かく)し持っていた鉾を手に取るや、素早く按司を刺し殺し、海の中に投げ捨てました。
突然のことで、一諾に行った連中もいましたが、我瀬之子の勢に恐それて、ただおびえるばかりでどうすることも出来ませんでした。
このことを聞いた夫人は、声をあげて泣き悲しみ.そのの痛々しい様子はなんとも例えようがありませんでしたが、賢(かしこい)夫人は、泣き、悲しむだけのただの弱い女ではありませんでした。
--我瀬之孑は、なぜ按司を殺したか--
と考えると思い当ることがあり、身の危険を感じて城をでて城外に抜け出し姿をかくしてしまいました。
(次回につづきます)