2020.01.30

『浦添八景』を浮世絵風に描き起こしたい

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その昔、かの有名な浮世絵師、葛飾北斎は『琉球八景』として資料を元に沖縄の風景を描いたという。ならば、てだこウォークのコースのひとつになっている『浦添八景』も、浮世絵風に描き起こすことができないだろうか。

老若男女、年齢を問わずに楽しめる沖縄最大級のウォーキングイベント、『第19回 浦添ツーデーマーチ てだこウォーク2020』(以下『てだこウォーク2020』)の開催日がいよいよ目前に迫って参りました。

開催日:2020年2月8日(土)、9日(日)
メイン会場:ANA SPORTS PARK 浦添

『てだこウォーク2020』では、下記のとおり2日間で合計8コースが設定されており、体力と興味に合わせてお好きなコースを選ぶことができます。

2月8日(土)
・30km(日本遺産と西海岸を巡るコース)
・10km(浦添八景と歴史遺産を巡るコース)
・5km(浦添城跡と当山石畳道を巡るてだこロードコース)
・3km(ビンゴ・ファミリーコース)

2月9日(日)
・30km(キャンプキンザーウォークコース)
・10km(浦添城跡と湧き水を巡るコース)
・5km(浦添美術館と大公園の高台を巡るコース)
・3km(ビンゴ・ファミリーコース)

前大会に引き続き『てだこウォーク2020』のPR記事を拝命した我々DEEokinawaは、昨年12月に『てだこウォークで「てだこ丼」を完成させる』と題し、イベント最長コースのひとつである8日(土)の30km(浦添西海岸と首里を巡る)コースをたどりながら、浦添グルメを白飯に乗せていきオリジナルの『てだこ丼』を完成させるというコラボ企画第一弾をお送りしました。


これが「てだこ丼」だッ!

浦添屈指のグルメの数々をのせた丼は確かに美味しかったのですが、正直に言うとできればひとつひとつ個別にじっくりと味わいたかったです(企画趣旨とは)。

そして今回、コラボ企画第二弾として、8日(土)の10km(浦添八景と歴史遺産を巡る)コースにスポットを当て、新たな企画をお送りしたいと思います。

コラボ企画

てだこウォーク2020
第19回 浦添ツーデーマーチてだこウォーク2020
今改めて見ても、てだこ丼のカオスっぷりがすごいです。あと野菜の少なさ。
http://www.city.urasoe.lg.jp/tedakowalk/2020/index.html

浦添八景とはなんぞや

2月8日(土)の10km(浦添八景と歴史遺産を巡る)コースは、浦添市内の史跡をはじめ、景勝地などから構成される「浦添八景」を巡る、浦添の魅力を存分に楽しめる、歴史好きな方にはたまらないコースとなっています。


※道路の状況によりコースは若干変更する場合があるのでご了承ください。

まずもって浦添八景とはなんぞや、というところをご説明すると、"未来に残したい浦添市の原風景"として平成27年3月に制定された、浦添市内にある以下8箇所の景勝地のことを指します。

  • ・浦添グスク(浦添城跡)
  • ・浦添ようどれ
  • ・ワカリジー(為朝岩)
  • ・当山の石畳道(普天間参詣道)
  • ・伊祖グスク(伊祖城跡)
  • ・カーミージー(亀瀬)
  • ・杜の美術館(浦添市美術館)
  • ・安波茶橋(中頭方西海道)

ちなみにてだこウォークの会場であるANA SPORTS PARK 浦添内には、この浦添八景をいちどに見ることができるたいへんお得なスポットもひっそりと存在していたりします。


『浦添八景がいちどに見られるお得なスポットがある』
参照

これら八景のうち、浦添グスク(浦添城跡)、浦添ようどれ、伊祖グスク(伊祖城跡)、安波茶橋(中頭方西海道)の四箇所については、文化庁により「日本遺産」にも制定されています。

※「日本遺産」とは、地域の歴史的魅力や特色を有形・無形の様々な文化財で語るストーリーにし、文化庁が認定してその魅力を広く発信するとともに、人材育成・伝承・環境整備の取り組みを効果的に行い、地域の活性化を図ることを目的としています。

コラボ企画

てだこウォーク2020
第19回 浦添ツーデーマーチてだこウォーク2020
とりあえず大会当日までに、坪庭の砂利の下に見えている黒い養生シートが隠れていることを願います。
http://www.city.urasoe.lg.jp/tedakowalk/2020/index.html

琉球八景の浮世絵があるならば、浦添八景も

と、浦添八景について概要をお伝えしたところで今回の企画の本題。
実は浦添八景が制定されるはるか昔、1832年に江戸時代後期に活躍したかの有名な浮世絵師、葛飾北斎がかつての沖縄の風景を描いた『琉球八景』という浮世絵を世に残しています。

『琉球八景』は全8枚で構成されており、現在の那覇市内にある泉崎や久米など沖縄の景勝地が描かれています。この連作が制作された1832年頃は、第11代将軍徳川家斉の代替わりにあたって慶賀のための江戸上りがあり、江戸では琉球関連の出版物が多く出回るなど琉球ブームだったと言われています。ちなみに葛飾北斎は琉球を直接訪れて景色を見たわけではなく、その前年に徳川幕府が刊行した『琉球国志略』という書のなかの挿絵「球陽八景」を参考にして『琉球八景』を描いたと言われています。

そんな『琉球八景』はさきほどご紹介した『浦添八景』のひとつでもある浦添市美術館に収蔵されており、年に一度、企画展にて一般公開されています。


昨年度の情報はこちら

それならば、現代の風景である浦添八景を浮世絵風に描き起こしたらどうなるのか見てみたい、というのが今回の企画というわけです。

というわけで今回、浮世絵の制作を依頼させていただくのは、フリーランスとして県内外で活躍中のイラストレーター、サイトウカナエさん。沖縄県立芸術大学出身で在学中は油絵を専攻、卒業後に独学でCGと日本美術を学ばれたそう。過去にお仕事で浮世絵風の作品も描いたことがあるとのことで、これはもう運命の巡り合わせとしか思えません。


浦添市内某所にて作戦会議中

まず、浮世絵についてはまったくの素人である私たち。制作にあたり、読者の方にもより伝わるよう、素人を代表してサイトウさんに基本的な質問をさせていただきました。
普通に考えて無茶振りもいいところですが、そこはさすがプロ。的確に応えてくださいました。

ーそもそもなんですが、浮世絵って定義とかあるんでしょうか?

サイトウさん)
うーん、そうですね・・・簡単に表すのはとても難しいので、基本的なことだけ言うならば、浮世絵や錦絵(=多色摺りの木版画)は絵師が描いた原画を元に、彫り師さんが板を彫って版を作り、摺り師さんが色をのせて摺っていくという工程で作られています。
一色ごとに版を作る必要があるため、多くの色は使えません。限られた色で表現し、効果的なポイントにグラデーションが入ることで、ぐっと奥行き感が出てくる...という特徴があるかもしれません。紅型の隈取りとちょっと似ています。

ー葛飾北斎が描いた『琉球八景』に見られる特徴などはありますか?

サイトウさん)
中国の冊封使がまとめた琉球に関する本の挿絵を見て、人気絵師の北斎が江戸でリメイクしたのが琉球八景です。
元になった絵はモノクロのもう少し単純な線画ですが、そこには描かれていなかった舟や、雪や、富士山までが描き足されてオシャレな風景画に生まれ変わっています。
当時、江戸はたいへんな「琉球ブーム」だったらしいのですが、実際行くことはそうそう叶わない時代。江戸っ子のあこがれが詰まった「琉球」の風景なんだなぁ...と思って見ると、また違った面白さがあるかもしれません。

ーイラストを"浮世絵風"に仕上げるためのポイントってあるんでしょうか?

サイトウさん)
木版画を作るつもりで、色を少なくしてちょっとグラデーションを入れると、なんとなくそんな雰囲気になるかも。
また、もくもくした雲や、横からスーッと出てくるかすみを描くと一気に東洋感がでます。都合よく空間を仕切ってくれたり、奥行きを出してくれるかすみと雲は、個人的に大好きです。


サイトウさんの浮世絵風の過去作品

というわけでサイトウ北斎画伯にすべてを委ね、完成の一報を待つことにしました。

コラボ企画

てだこウォーク2020
第19回 浦添ツーデーマーチてだこウォーク2020
池上永一著『トロイメライ』文庫本の表紙イラストを描かれたのは、実はサイトウさんです。そんなすごい方に依頼して果たして大丈夫だったのでしょうか。
http://www.city.urasoe.lg.jp/tedakowalk/2020/index.html

これが『ゆる浦添八景』だ!

そして数日後。
「完成しました!」と送られてきたのがこちらの作品群、題して「ゆる浦添八景」です。


ゆる浦添八景 その壱 浦添グスク


ゆる浦添八景 その弐 浦添ようどれ


ゆる浦添八景 その参 ワカリジー


ゆる浦添八景 その四 当山の石畳道


ゆる浦添八景 その五 伊祖グスク


ゆる浦添八景 その六 安波茶橋


ゆる浦添八景 その七 杜の美術館


ゆる浦添八景 その八 カーミージー

浮世絵風を醸し出しつつも、いい具合のゆるい雰囲気にまとめあげてくれました。
いや、素晴らしいの一言です!

伊祖グスクのクワズイモの葉っぱの下に月夜の晩にオカリナ吹いてそうな奇妙な生き物がいたり、カーミージーの遠景に富士山ぽい山があったり(葛飾北斎も『琉球八景』に何故か富士山を描いていた)と、散りばめられた遊び心がにくいです。

サイトウさんにも制作を終えた感想を伺ってみました。

サイトウさん)
北斎の琉球八景も大好きだし、浦添の八景に指定された各ポイントもそれなりに思い入れがあったため、ちゃんと描こうと思ったらとても...(このギャラでは...)描けない...。
依頼をいただいた時、まずそう思いました。(ごめんなさい)
しかし、媒体はあのDEEokinawaさん。ここでしか描けない、ゆるゆるの浦添八景があるのではないか?との考えに至ったあと、ほぼ何も考えずに描き上げたのがこの8枚です。ただただ楽しゅうございました。

いやはや、もうサイトウさんには感謝の念しかございません。
ここはひとつ浦添市で大々的に予算を組んで、『非ゆる浦添八景』を制作する一大プロジェクトを立ち上げてもらいたいと思います。見てますかー?松本市長ーーー!!

コラボ企画

てだこウォーク2020
第19回 浦添ツーデーマーチてだこウォーク2020
いやはや、かなり無理をさせてしまったようです。この場を借りて、ごめんなさい。
http://www.city.urasoe.lg.jp/tedakowalk/2020/index.html

ようどれ館に『ゆる浦添八景』を持ち込んでみた

せっかくなので専門の方にも見ていただこうと『ゆる浦添八景』を持って訪れたのは、浦添グスク・ようどれ館

浦添グスク・ようどれ館では、古写真や発掘調査成果のパネル、出土遺物などが展示されており、浦添グスクと浦添ようどれの歴史を分かりやすく学ぶことができます。なかでも、実物大で再現された浦添ようどれの西室(英祖王陵)は必見です。

対応いただいたのは、特定非営利活動法人・浦添市教育委員会認定ガイド『うらおそい歴史ガイド友の会』の事務局長である玉那覇 清美さん。

今回の『ゆる浦添八景』について、認定ガイドの視点から講評をいただきました。


浦添グスク
感じが出ていますね。でもここに松があったかしら...?
この道は復帰後にできたものですね。


浦添ようどれ
上に浦添グスクが見えているし、松も見えていて良いですね。
実は昔、ようどれにはアーチ型の門があったので、それもあったらもっと良かったかも。
戦争で壊れてようどれは復元したんですが、アーチ門は復元できていないんです。


ワカリジー
良いですね。海も見えるし、拝所もちゃんと描かれている。誰がなんと言おうとワカリジーです。


当山の石畳道
馬がいますね。なんとなく分かります。急坂で馬が通れないんですよね。
ここを通って王様が普天間参詣に行くんですけど、この急坂を籠に乗ってどうやって行ったのかなっていつも思っちゃいますよね。


伊祖グスク
これは木のインパクトがすごいですね。
もっと参道の石畳をメインにした方が、伊祖グスクっぽいかな?と思いました。


安波茶橋
これは北橋と南橋があるのですぐ分かりました。
このあたりは昔お茶畑だったんですが、橋の脇には自然の湧水があったので、みんなここで休憩していたという話もあります。橋は復元したものですが、部分的に戦前の石積みがそのまま見られるところもあるんですよ。


杜の美術館
これは何も言われなくても美術館って分かりますね。


カーミージー
新しい道路(浦添西海岸道路)ができましたよね。
カーミージーは昔、石切場だったんです。粟石(あわいし)を切り出して、お墓とかに利用していたんです。その跡がまだ残っているので、そこまで分かればもっと良かったですね。
龍宮神の洞窟があったんですが、道路ができたので現在ではもともとの場所は閉めて岩の先に移動してます。
この山は...富士山でしょうか?

以上、実際の景色や歴史的背景もよくご存知の玉那覇さんならではの講評でした。
お忙しいところ、ありがとうございました。

コラボ企画

てだこウォーク2020
第19回 浦添ツーデーマーチてだこウォーク2020
他と比べて『杜の美術館』に対するコメントの淡白が若干気になりますが、的確な講評をありがとうございました。
http://www.city.urasoe.lg.jp/tedakowalk/2020/index.html

それでは『てだこウォーク2020』で会いましょう

というわけで今回は、浦添八景を『ゆる浦添八景』として浮世絵風に描き起こすという企画をお届けしました。

『てだこウォーク2020』2月8日(土)の10km 浦添八景と歴史遺産を巡るコースでは、ご紹介した浦添八景のうちカーミージーを除く七景を見ることができます。
※カーミージーは2月8日(土)の30kmコースと2月9日(日)の20kmコースで付近を通ります。

それぞれの予定や体力、興味に合わせて2日間合計8コースから選べ、さらにゴールの後にはステージイベントやガラポン抽選会、地元グルメ屋台の出店なども用意されており、丸ごと一日楽しめるウォーキングイベントです。

郵便での申込とインターネット(スポーツエントリー)申込は既に締め切られましたが、下記の指定窓口での事前申し込みは1月31日(金)まで受付中です。

指定窓口
・ANA SPORTS ARENA(浦添市民体育館1F)受付/9時~20時30分(定休日除く)
・ANA まじゅんらんど 浦添(浦添市温水プールまじゅんらんど)受付/9時~21時30分(定休日除く)
・(一社)浦添市観光協会(結の街4F)受付/9時~18時(土日・祝日除く)

そして、ギリギリにならないと予定が分からなくて...という方も大丈夫!なんと当日受付も可能なんです。
詳しくはこちらの『てだこウォーク2020』募集要項をご確認ください。

『ゆる浦添八景』を探しながら歩くもよし、自分だけのてだこ丼を作りながら歩くもよし。
ウォーキングしながら、浦添市の魅力を再発見してみてはいかがでしょうか。

コラボ企画

てだこウォーク2020
第19回 浦添ツーデーマーチてだこウォーク2020
もしかしたら、会場でこの『ゆる浦添八景』に出会えるかも...?(現在鋭意調整中)
http://www.city.urasoe.lg.jp/tedakowalk/2020/index.html

《取材協力》
サイトウ カナエさん|[サイトウカナエblog] [運営サイト〈イラスト沖縄〉]
浦添グスク・ようどれ館|[浦添市ウェブサイト] [NPO法人 うらおそい歴史ガイド友の会]

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