2012.04.18

【大人の社会見学】伝統の鍋シンメーナービ工場

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県内で唯一シンメーナービを作る工場が読谷にあります。伝統と技を残す工場とはいったいどんな工場なのでしょうか。

県内最後のシンメーナービ工場へ

沖縄のホームセンターには必ずある大きなアルミの鍋。

こんなの。よく見ますよね

現在沖縄でこの鍋を作れるのは1ヶ所だけなのをご存知でしょうか。
本日は伝統を守る最後の工場である『宇良アルミ鋳物工場』さんの工場見学レポートです。

シンメーナービの作り方

社長の宇良宗春さんは宇良アルミ鋳物工場の3代目。
2代目を継いでいたお兄さんが亡くなったので、7年前に3代目として跡を継いだそうです。

シンメーナービの制作の過程をおおまかに説明すると
最初に「鋳型(いがた)」と呼ばれる砂の土台を作り、その上にコンクリートでできた上型を置きます。
そして鋳型と上型の隙間に溶けたアルミを流し込むことで、形を作ります。

アルミはリサイクルで集まったフライパンなどのアルミ製品を溶かし不純物を分けて取り出しているそうです。
ちなみにシンメーナービの原料はアルミだけでなく、廃車のエンジンを溶かしたジュラルミンを3:1で混ぜたもの。

シンメーナービの元はフライパン
フライパンを溶かしてアルミ棒に

工場に伺ったときはちょうどアルミを溶かしている途中でした。

轟々と火が燃える窯の中で溶けていくアルミ棒。

これがどんな風になれば型に流し込めるのか聞いてみたところ、
「流し込むタイミングはアルミがピンク色になってから。
温度計をとかで計るんじゃなくて全部自分の目で見て判断する。熱すぎても冷えすぎてもダメ。
今の感じだとあと20分ぐらいはかかるね」

とのこと。

アルミが溶けるまで工場を案内してもらいました。

そもそもシンメーナービとは?

今回はわかりやすく、アルミの鍋を総称して「シンメーナービ」と呼びますが、「シンメーナービ」を漢字で書くと四枚鍋。
鍋を作る際に4枚分の鉄板で作ったとか、40人分の料理が作れるとか諸説ありますが、つまるところは「シンメー」の部分は大きさの単位。

一番大きいのは10メーナービ(十枚鍋)。

一番奥にあるのが10メーナービ

10メーナービはものすごく大きいので、一般家庭ではなく豆腐屋さんや給食センターなどで利用されるそうです。
この鍋を作るには最低でも3〜4名は人数が必要ですが、現在工場さんで働くのは社長の宇良さんと唯一の従業員である石川さんの2名。
「だからもう作れないんだよな」と宇良さんは自分の言葉に頷くようにおっしゃっていました。

2番目に大きいのは8メーナービ。
こちらは2名で作れるので、現在作ることのできる最大の鍋です。

こども用の風呂桶としても使えそう!

そして一番小さい鍋。

形はシンメーナービのままでかわいい

受け継がれる道具と技

鋳型(土台)として使用する砂は初代から受け継がれた砂で、60年以上モノ。

アルミの熱で砂が焼けて黒くなっているのが年代の証

こちらは鍋の表面を削る台。

爪に鍋を取り付けて研磨します

鍋の大きさによって削る時間も変わるそう。

小さいのは15分、大きいのは1時間半ほどかかるそうです

宇良さんは言います。
「うちは兄弟が5名いたから、昔はアルミを流し込む担当、磨く担当と作業を分担してやっていたんだけどね。
削る作業は兄さんがやっていたよ。
今は全行程を2人で全部やるから忙しいよ。」

最近は外国からも注文がくる

伺ったときに作っていたのはフランスからの注文。
フランスでは空手が人気で、棒術などの稽古の際に使う防具の注文がきたそうです。

その他にも以前にはブラジルから今川焼き器の注文がきたりと、鍋以外のものでも注文があれば作ってしまうそう。

アルミを流し込む

砂で作られた土台は毎回作り直して使います。
今回は16個分の型を取るので朝の5時から土台を作る作業をしていたそうです。

全部同じに見えるけど1つ1つ手作りの砂山です

アルミ棒が完全に解けて、ピンク色に燃え上がってきました。

ここからは完全に職人の勘

砂でできた土台に上型をかぶせアルミを流し込みます。

アルミがピンク色になってます。

上型を押さえる石川さんの力加減もその日の気温や湿度で変えなければならないそう。

アルミを流し込んでから1分後。
上型を取ります。

すごい!できてる!

アルミが型に流れる時間で失敗か成功かはだいだいわかるそうです。
宇良さんと石川さん2人の息のあった流れるような作業が見ていてとても心地良く、これぞ熟練の技という感じです。

あっという間に出来ていく

「でも兄さんが亡くなってからの最初の半年は微妙な違いがわからんくて全部失敗した。」
と宇良さん。半年間全部失敗って。ヒー!

流れるような作業をぜひ動画でもお楽しみください。

人が使ってこそ

昔は県内に工場がいくつもあったそうですが、作り手の負担や減り続ける需要から、今ではシンメーナービを作ることができる最後の工場となった宇良アルミ鋳物工場さん。

宇良さんは亡くなったお兄さんの「シンメーナービの伝統をなくさないでほしい」という言葉を受け継ぎ、誇りを持ってシンメーナービを作り続けておられます。
ただ跡継ぎがいない現状ではあと何年残せるかな、ともおっしゃっていました。

1から手作りのシンメーナービ。
跡継ぎ問題ももちろんですが、まずは現代にあわせた形で日常的に使えるようになれればと思っています。
みなさん、最小サイズから使ってみませんか?

宇良宗春さんと従業員の石川さん

お忙しい中ありがとうございました

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