2013.03.14

70年ぶりに復活した沖縄競馬「ンマハラセー」を見てきた

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沖縄にその昔、競馬の歴史があったのをご存知でしょうか?その競馬はスピードではなく優雅さを競い、ウチナーンチュを熱狂させたイベントだったそうです。

3/2、3/10の2日間、沖縄子どもの国で約70年ぶりに沖縄競馬「ンマハラセー(ンマハラシー)」が行われました。ンマハラセーとは古琉球の時代から戦前まで約500年間、沖縄各地で行われていた沖縄在来馬で競った競馬です。

今では沖縄にいる在来馬は宮古馬、与那国馬の2種(日本全体では8種)で宮古馬は沖縄県の天然記念物、与那国馬は与那国町の天然記念物に指定されており、どちらも保存会の活動によって徐々に増えてきていますがまだまだ頭数は少ない馬です。

しかし、そもそも沖縄には宮古、与那国以外にも沖縄本島産馬、伊平屋馬など種類も数も今よりずっと多くの在来馬がいました。それらの在来馬は小さくて優しい性格で、荷物を運んだり、農耕のお手伝いをしたりと、人間の生活に密着して仲良く暮らしていたそうです。
そんな沖縄在来馬で競うンマハラセーは、スピード勝負ではなくいかに優雅に進むことができるかという、足並みの美しさを競う勝負でした。

勝負を見る前にもう少しルールをみてみましょう。

ンマハラセーのルール

当日会場に出されていたンマハラセーのルールです。

1.速足の優雅さ

馬がゆっくり歩くときに見られる「並足」
急ぎ足のときに見られる「速足」
飛ぶように走る「駆足」

並足が遅く駆足が速いのですが、ンマハラセーは中間の「速足」が基本。

速足でいかに速く、優雅に走られるのか、が勝負の決め手になります。
全力疾走してしまうと失格になってしまうとか。

2.2頭が紅白に分かれて競う

2頭が紅白に分かれてコースを往復して競います。
今回は会場の都合で100mを往復しますが、本来は200mぐらいの一直線の道で競っていたそうです。
ゴール後には審判がどちらが勝ちか赤白の旗を上げて判定します。

3.トーナメント方式

今回は総勢24頭が出場。優勝をかけてトーナメントで戦います。

文献があまり残っていないため、詳しいルールは調査中で、いつか本来のルールがわかれば、現在のルールが変更になる場合もあるそうです。

ンマハラセーはオシャレ

会場ではスタッフの方が丁寧に在来馬やンマハラセーの解説をしてくださってました。

ンマハラセーで使われていたコース(馬場)の絵

まっすぐな道に琉球松が植えられていたそうです。
昔はこんな場所が県内にいくつもあったとか。

説明が終わったら子どもたちを集めて消しゴムをプレゼントしていました。

かわいい消しゴム。

馬小屋では出乗馬たちがオシャレに飾られています。

ンマハラセーは優雅さを競う競技なので、オシャレも基本なのでしょうか。


編み込まれたしっぽ

馬も騎手もかつての着物をまとって準備万端です!

いざ、レース!

ンマハラセーのスタートは騎手同士がスタートの息を合わせるところからはじまります。
スピード勝負ではないので、お互いが集中できたタイミングがスタートなのだと思います。
白い線のスタート前でお互いに「さぁ行こう」と合図を交わして走り出します。

スピードを競うJRA競馬の騎手は体を馬に平行にするように乗りますが、ンマハラセーでは体は馬にほぼ直角。

生活に密接に関わる馬は、速さだけでなく背中に乗せた積み荷を落とさないように運べることも必要な技術。
ンマハラセーでは同じように走っている最中に騎手の体が揺れないように走ります。「優雅に走る」言葉では理解しづらかったものの、実際の走行を見ればなるほどと思いました。

今回の審判役である照屋寛得さんと宮里朝光さんは子どもの頃に実際にンマハラセーを見て育ったとか。

「赤の勝利!」


70年ぶりに見るウマハラセーをお二人はどんな思いで見ていたのでしょう。

特別ゲストのJRAの元騎手である岡部幸雄さんも来られていました。

与那国馬に乗って、与那国の衣装をまとっておられます
(優勝候補だったものの2回戦で敗退されました)

全力疾走したり、興奮して歩行リズムを崩してしまわないように、騎手と馬が心を合わせ落ち着かせながら走らせます。

在来馬の大活躍

今回のレースに出た全26頭のうち、大和馬もおそらく半数ほど出場していたのですが、準決勝の4頭に残ったのは在来馬3頭、大和馬1頭。正直馬のことはよくわかりませんが、あの小さな体の在来馬が勝てるというのは、やはり温厚で優しい性格で優雅さを競うレースに向いているからなのだと思いました。

写真だけじゃわからん!という方は映像でご覧ください。
このレースは準々決勝(在来馬と在来馬のレース)のもので、会場がどよめくぐらいどちらが勝ったのかわからない良い試合でした

決勝戦はこどもの国で飼育されている与那国馬の「どぅなん」と、大和馬「シャイニングスター」の勝負。

シャイニングスターも落ち着いた堂々とした走りでしたが、どぅなんはそれ以上の集中力で一度もリズムを崩すことなく走りきりました。

そしてどぅなんが優勝!!

体の小さい希少種である与那国馬どぅなんが勝った瞬間は会場が湧きました!

ンマハラセーのこれから

最初の方で書きましたが沖縄在来馬は現在は宮古馬と与那国馬のみ。
昔は本島産の馬や伊平屋島産の馬もいて、沖縄県各地でンマハラセーは楽しまれていたそうです。
しかし戦時下で戦力用の大きい馬を作るために大和の馬と掛け合わしたり、体が小さい在来馬が増えないようにオス馬を虚勢したりという政策が行われました。その結果、生活の中から馬が姿を消し、本島産の馬と伊平屋馬は絶滅し、ンマハラセーは途絶えたそうです。

そんな悲しい歴史がおこる以前はンマハラセーが行える馬場の数は那覇市内だけで18カ所もあったそうです。

古波蔵に残る馬場跡


ウマハラセーではなく馬勝負(ウマスーブ)とあります

はじめてンマハラセーを見ましたが、優雅さはもちろん、馬と人が心をあわせるようすや、試合のドキドキ感にすっかり夢中になっていました。それは私だけでなく、会場にいた人たちも試合ごとに歓声が大きくなっていったり、いつの間にか贔屓の馬ができていたりと、人を熱中させる何かがあるような気がします。
昔の人が熱中したということがすごくわかりました。

関係者の方のお話では今後もンマハラセーを開催していくということだったので、機会があればぜひ見に行ってみてくださいませ。

イベント終了後に、こどもの国の動物園コーナーに行ってみると優勝したどぅなんがご褒美の草を食べていました。(どちらがどぅなんなのかはわからなかったけど)

ご苦労様!ありがとう!

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