2017.01.20

泡盛でお屠蘇を作ってみた

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お正月にいただくお酒「お屠蘇(とそ)」。みなさんの家庭では飲む習慣がありますか?本日は、沖縄の特産品・泡盛でお屠蘇は作れるのか? チャレンジしてみます。

「お屠蘇(とそ)」とは?

最近ずっとお正月に関する記事が続いているようなので、私もその流れに乗ってみたいと思います。笑

日本には元旦の朝、家族一同がそろって「お屠蘇」の名前で親しまれるお酒を飲む風習があります。1年間の長寿健康を祈願する慣わしです。
ちょっと難しい名前は「邪気を屠(ほふ)り、心身を蘇(よみがえ)らせる」ところから由来しているのだそうです。

お屠蘇は、数種類の生薬を調合した屠蘇散(とそさん)を、清酒やみりんに一晩漬け込む祝いのお酒。
書物によって違いますが、一般的にはオケラの根(白朮)・サンショウの実(蜀椒)・ボウフウの根(防風)・キキョウの根(桔梗)・ニッケイの樹皮(桂皮)・ミカンの皮(陳皮)などの生薬を配合します。身体を温めたり、胃腸の働きを助けたり、風邪の予防にも効果的ですね。

 

まずは、日本酒でお屠蘇を作ってみた

そもそも、本来のお屠蘇ってどんな味なんでしょうか? みなさん飲んだことありますか?
周りの方々に聞いてみたところ、お屠蘇という存在は知っているけどお茶やジュースや甘酒などの代用品で済ませていたり、そもそも飲む習慣がなかったり。本来のお屠蘇を飲んだ経験がない方が多いようです。

そこで、泡盛を使ったお屠蘇作りに挑戦する前に、日本酒を使ったオーソドックスなお屠蘇を作ってみました。

200mlの日本酒に、屠蘇散1パックを投入し(ティーパックのようになっている)一晩漬け込みます。
日本酒は屠蘇散の味を引き立てるため、口あたりの良さそうな銘柄を購入。

●色:薄い茶色、さんぴん茶って言われたら騙されそうな感じ

●香り:もとが日本酒なので日本酒らしい甘い香り+シナモンっぽい香りがする。なぜ?と思って調べてみたら「ニッケイ・ケイヒ」=「シナモン」だったのでした。道理で!

●味:日本酒の味はほとんどなくてアルコール感だけが残っている。香りの中には、しっかり日本酒を感じたのに不思議!柑橘系の味とシナモンの味をしっかり感じる。味見をした母親の感想は「紅茶みたい!ジャムとかと合いそう!クセになる!」。

日本酒ベースのお屠蘇を作ってみた結果、ミカンの皮のおかげで柑橘類の味がするので、泡盛とあうんじゃないか? という予想を立てることができました。昔から泡盛にシークァーサーを搾るアレンジはメジャーですもんね。
ただし、泡盛自体のクセは控えめだといいかも。やってみないと分からないですが、泡盛感・アルコール感は強く残る気がします。

 

沖縄のお正月にぴったりな泡盛ベースのお屠蘇を作ってみよう!

銘柄によって味が違う泡盛。
今回は、家庭で再現してもらいやすいように、スーパーなどで手に入れられる銘柄の中から4種類の泡盛でお屠蘇を作り、味の違いを比べてみます。
ストレートで飲むことも考えて、度数は25度から30度に統一しました。

使用する泡盛の銘柄は以下の通りです。

1.沖縄県酒造共同組合:南風(新酒、30度)

「沖縄県酒造共同組合」は、県外や海外へ広く泡盛を普及させることに取り組む団体で、県内の泡盛製造業者によって設立されました。
質の良い泡盛を広めるため、各酒造所から集めた中から選びぬいた最良の原酒で商品を作っています。泡盛業界がひとつになって開発した沖縄県酒造協同組合の泡盛のひとつが「南風」。徹底した品質管理のもと製造されるその味は、あまり知られていないかもしれませんが「代表的な泡盛」と紹介できる銘柄ではないでしょうか。(しかも価格も高くなく、購入しやすい!)

 

2.咲元酒造:咲元(新酒、30度)

個性派の銘柄として名前の上がることが多いのが、琉球王朝時代からの酒どころ・首里にある「咲元酒造」の「咲元」。ろ過をあまり行わない方法で作られ、味の濃い泡盛の代表格です。

ロースト香(焙煎香)と表現される、お米の焦げたような味わいが特徴的で、珈琲で割っていただくと絶品です!(社長もいつも珈琲割りで飲んでいるそう)お屠蘇のベースに合うかは試してみないとわかりません。ちょっと冒険してみたいと思います♪

 

3.崎山酒造廠:松藤(新酒、25度)

金武町伊芸にある「崎山酒造廠」の「松藤」は、製造行程の全てに恩納岳の豊かな天然水(軟水)を使っている珍しい泡盛です。水へのこだわりだけでなく、時間をかけた丁寧な仕込みをすることでも有名。酒造所を見学させてもらうと、昔ながらの製造過程が垣間見え、さらにファンになってしまいます。

そんなこだわりの泡盛と屠蘇散のコラボレーションはどうなるか? 試してみたくて選びました。

 

4.比嘉酒造:残波(新酒、30度)

比嘉酒造の「残波」30度は、「ザンクロ」の愛称で世代を超えて親しまれている、泡盛を代表する銘柄です。泡盛は男性が飲むお酒というイメージが強かった時代に、2代目社長の比嘉健氏が『女性や泡盛が苦手な方にも美味しく飲んでもらえる泡盛を作りたい』との思いから試行錯誤を重ね、やっと完成させた商品だったりするのです。

どんな方にも「飲みやすい」と受け入れられる泡盛と屠蘇散の組み合わせは、どんな味がするのでしょう?

この4種類の泡盛100mlに、屠蘇散1パックずつを投入し一晩漬け込みます。

 

屠蘇散を漬け込んだ結果……

一晩(7時間ほど)漬け込んだ翌朝の色は、どれもほぼ同じです。紅茶のような綺麗な茶色になりました。
日本酒が200mlだったのに対し、泡盛は後で割って飲むことも考えて半分の100mlで作ったので、だいぶ濃い色が出た気がします。

 

1. 沖縄県酒造共同組合:南風(新酒、30度)

●香り:最初に感じるのは、シナモンの甘い香り、アルコールの香り。その後にしっかりと泡盛の原料である米や油っぽい香りが主張する。

●味:山椒のピリッと感とシナモンとアルコール感を強く感じる。日本酒の時と比べて、「ん?これは何のお酒?個性的だな」と感じるかも。

 

2.咲元酒造:咲元(新酒、30度)

●香り:最初は、シナモンの甘い香りとアルコールの香り。「南風と一緒かな……」と思った次の瞬間に! なんということでしょう。先ほど咲元の特徴として挙げた、お米を焦がしたようなロースト感をしっかり感じる! もともとこんなリキュールがあったような錯覚に陥るほど、合っているかも。

●味:シナモンの甘さと、咲元の持つお米の香ばしさがマッチ! そこにちょこっと山椒のピリリが利いている。屠蘇散の成分の個性的な味に負けていない。正直一番マッチしないんじゃないかと思っていたので、良い意味で期待を裏切る結果になりました。

 

3.崎山酒造廠:松藤(新酒、25度)

●香り:こちらもシナモンの甘い香り、アルコールの香りを感じた後に、しっかりと泡盛の米や油っぽい香りが主張する。

●味:山椒、シナモン、アルコール感。上の二つと比べると、原料由来の味わい(お米っぽさ)を感じず、口あたりがすっきりした印象。

 

4.比嘉酒造:残波(新酒、30度)

●香り:シナモンの甘い香り、アルコールの香りの奥に、他の銘柄には感じなかったさわやかな青リンゴに近い香りを感じる。アップルパイにシナモンがぴったりなことから考えても、この組み合わせは期待ができる!

●味:香りに反して、口に含んだ瞬間に「お酒だよ!」とかなり主張するアルコール感。シナモン、山椒の順番に味わいが追ってやって来る。残波そのものがすでに飲みやすく完成されているので、リキュールのように味を加える必要はないのかも。これは発見でした!

というわけで総評です。

まずは香り。日本酒ベースと泡盛ベースのお屠蘇を比べると、どちらも同様に屠蘇散のシナモンや山椒の香りが引き立っています。ただ、泡盛お屠蘇はアルコール感が強いので、子どもがいる家庭では水割りして容器に移すなど一手間かけた方が良さそうな気がします。

そして味。日本酒ベースのお屠蘇を他のお酒に喩えるなら、シナモンの利いたお茶リキュール。しかし泡盛ベースのお屠蘇は、中国のお酒・紹興酒によく似ています。シナモンと泡盛の相性が予想以上に良く、銘柄によってかなり口あたりが良い味わいを出すこともできたので、お酒好きな方にはおすすめ!ぜひ一度試してほしい仕上がりになりました。

 

まとめ

今回の挑戦は、沖縄の伝統的なお酒・泡盛でお屠蘇が作れるのか?(美味しいのか?)
それぞれ風味や製造工程で特徴のある4つの泡盛を選び、屠蘇散を一晩漬け、味や香りを比較してみました。

実験前の予想としては、爽やかな飲み口の「比嘉酒造:残波(30度)」が一番マッチし、個性的な風味の「咲元酒造:咲元(30度)」が屠蘇散とは一番ケンカしてしまうのではないかと考えていました。しかし、なんと真逆の結果に!おそらく、お屠蘇の味を決める屠蘇散に含まれるケイヒ(=ニッケイ、シナモン)の主張が強いので、それに負けないような銘柄との相性がいいのだと思われます。

もうひとつ興味深かったのが、ベースの泡盛によってお屠蘇の風味に違いが出ることです。こう考えると、やっぱり泡盛は奥が深いですね。
ぜひ来年は、自分のお気に入りの泡盛でお屠蘇作りを楽しんでみてください。

ゲストライター

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kudaka
沖縄で生ま育った、沖縄在住ライターです。
ひょんなことがきっかけで泡盛に興味を持ちはじめ、2016年春に泡盛マイスターの資格を取得。『泡盛じょーぐー(沖縄方言で「大好き」の意味)』としてお酒にまつわる情報も発信しています。
 
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