2011.02.16

【ゆーふるやー探訪記】旭湯

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
初めて沖縄の銭湯(ゆーふるやー)を訪れたとき、本土の銭湯とのあまり違いに驚愕した。と同時にその独特の作りにいたく感動した。そのゆーふるやーも県内に残るはわずか。絶滅してしまう前に記録を残しておきたい。

湯船につかる文化が無いことで有名なここ沖縄にも、「ゆーふるやー」と呼ばれる銭湯が存在する。
この沖縄の銭湯、本土の銭湯と比べてみるとひと味もふた味もちがう

10年ほど前、私が移住前に沖縄貧乏旅行で安宿に泊まっていたときに初めて銭湯を利用したのだが、本当にカルチャーショックを受けた。同行の友人と「これはすごい」「ほんとうにすごい」「他の銭湯も行ってみよう」と興奮しきりだっ た。

ピーク時は県内に300軒以上の銭湯があったそうだが、一般家庭への浴室の普及による客数現象や道路拡張による立ち退きなどにより次々と廃業し、現在那覇 市に2軒、沖縄市に1軒が残るのみとなった。本当に残念である。
沖縄の貴重な文化遺産ともいえる「ゆーふるやー」の記録をなんとか残しておきたい!
そんな想いで、これから残り3軒の銭湯を取材して巡りたいと思う。

前回の「ときわ湯」(2009年10月閉店)に続き、今回は那覇市の「旭湯」を紹介したい。

建物の2Fからお湯の香り?

旭湯を訪れてまず驚いたのは、建物の2Fに銭湯があること。
これは全国的にみても珍しいつくりなのではないだろうか。
建物の1Fには以前沖縄海邦銀行が入っていたが現在は無くなり、4台ほど停められる駐車場になっている。

asahiyu01.jpg
この暗い階段を登っていく。
asahiyu02.jpg
ここは本当に銭湯・・・?

階段をのぼりきり通路を奥へと進むと右手に番台が。
そして銭湯独特のお湯の香りがぷ〜んと漂ってくるので、ようやく「あぁここは銭湯なんだ」と認識できる。

asahiyu03.jpg
階段を振り返るとこんなかんじ。
asahiyu04.jpg
喫煙所も完備。花ブロックViewだ。

asahiyu05.jpg

番台を守るのは上原フミ子さん(83歳)。
小さくてかわいらしく、とても上品な方だ。

少しお話を伺ってみると、この銭湯はもう60年もここで営業を続けているらしい。
足腰の痛みを癒すために毎日のように通って来る70〜80歳の常連さんもいるそう。
「病院に行くよりもここのお湯のほうが効くって言ってくれて。」
湯船につかりながら、常連さん同志ユンタクするのがなによりも楽しみなんだそうだ。

「石鹸やタオルはこのロッカーに預けて、肌着だけ手に持って来るのよ。」とフミ子さんは笑う。

asahiyu06.jpg
番台前のロッカーに入っているのは常連さんの入浴セット。
asahiyu07.jpg
番台の中はフミ子さんの小さな城。ストーブ完備。

実はこの旭湯、とても残念なことに、道路拡張による建物取り壊しのため今年5月での閉店が決まっている。(日は未定)
「通ってくれている方のために、あと五箇年はやりたかったけどねえ・・。」

那覇にはもう一件「日の出湯」があるが、やはり常連さんにとっては慣れ親しんだこの場所が落ち着くのだろう。
地域のお年寄りたちの交流の場が無くなるのが本当に残念でならない。

asahiyu08.jpg
忘れ物?誰のシャッポだろう。
asahiyu09.jpg
「ほらほら、寒いから早くあったまらないと」と優しく促され、いざ扉の向こうへ。

いざ浴場へ

扉を開けカーテンをめくると、股をガシガシ洗っている先客のオバァとばっちり目が合った。
そう、気をつけて入らないと洗い場が廊下から丸見えなのだ。(下の写真で見ると入口は扇風機の向こう側あたり)

asahiyu10.jpg

脱衣所と洗い場の仕切りがない、正しい沖縄の銭湯の様式。

asahiyu11.jpg
洗い場の湿気がダイレクトなので鏡が曇る。
asahiyu12.jpg
年季の入った洗い場。蛇口が6つにシャワーがひとつ。
asahiyu11.jpg
ユと水が出る。ユ。
asahiyu14.jpg
"大衆浴場" という響きがなんともたまらない。
asahiyu16.jpg
アルミの浴槽に薄い緑色のお湯。お湯はちょっと独特な香りがした。
asahiyu17.jpg
ロッカー替わりのタンスもいい味を出している。

asahiyu15.jpg

旭湯のお湯は地下水を組み上げて沸かしているのだが、近年水量が減少しているらしい。
浴室内には「洗濯禁止」の注意書きが何箇所にも貼ってあった。洗濯機が普及する前は、入浴ついでに洗濯してしまう人も多かったのだろう。限りある資源、大切に使おう。

またひとつ沖縄のゆーふるやーが消えていく

5月の閉店後、建物自体も年内には取り壊されてしまうらしい。
3階がフミ子さんや息子さん家族の住居になっているそうなのでその引越しも大変だろう。

asahiyu19.jpg

目の前はバス通りでたしかに交通量が多い。
旭湯の隣の敷地はすでに更地になっており、工事計画は着々と進んでいる様子。

asahiyu20.jpg

1Fは駐車場、2Fが銭湯、3Fが住居。この建物自体も60年以上の歳月を経ている。

asahiyu21.jpg

またひとつ、沖縄のゆーふるやーの灯が消えていくのが本当に残念でならない。
ゆーふるやー未体験のみなさんには是非いちど足を運んで、体験しておいてほしいと思う。
フミ子さんには身体に気をつけて無理しないように、最後の日まで常連さんたちにいこいの湯を提供し続けてほしい。

大衆浴場 旭湯
住所:沖縄県那覇市樋川1-27-9
定休日:水・木・日 ※2/16(水)〜20(日)はボイラー工事のため臨休
営業時間:15:00〜21:30
料金:大人(12歳以上)350円/中人(6歳以上)250円/小人(6歳以下)100円
※2011年2月15日現在の情報です

月間ベストワースト記事投票実施中

関連する記事

フォローしたらいいことあるかもよ

DEEokinawaの新着記事や裏話、面白写真などが毎日届くかもしれません。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

Copyright©DEEokinawa All Rights Reserved.
このウェブサイトに掲載のイラスト・写真・文章の無断転載を禁じます。すべての著作権はDEEokinawaに帰属します。

ページのトップへ