2014.09.01

石垣島四ケ字のプール(豊年祭)では何が行われているのか

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八重山では旧暦6月に、稲と粟の収穫感謝と豊年祈願をする豊年祭「プール」が行なわれます。今回は7月21日と22日に行われた、石垣島四ケ字のプールの一部を紹介したいと思います。

八重山では旧暦6月に、稲と粟の収穫感謝と豊年祈願をする豊年祭が行なわれます。一般に「豊年祭」とも「プール」「プーリィ」とも呼ばれます。
プールは2日に分かれて行われ(地域によって1日のところもあります)、1日目が各字の御嶽に供えものをして豊作を祈願する「オンプール」、2日目が奉納芸能を中心に行う「ムラプール」です。

今回紹介する四ケ字とは、石垣島の中でも市街地である登野城・大川・石垣・新川の四つの集落の総称ですが、実際は四ケ字だけでなく、新川に双葉地区も含まれています。市街地の地区が合同で行うこの祭りは、八重山各地で行われている豊年祭の中でも最大規模のもので、2日目の「ムラプール」は、「五穀の種子授けの儀」「アヒャー綱」「ツナヌミン」など見どころが多いのです。

それではこの石垣島最大の豊年祭ではどんなことが行われているんでしょうか?レポートしてみたいと思います。

 

豊年祭1日目「オンプール」

オンプールの「オン」とは各村の祭事を行う拝所である「御嶽」のことです。
オンプールは午前10時頃から4地区がそれぞれの御嶽に分かれて、祭事を執り行います。
複数の御嶽で祭事が同時進行するため、この日は登野城を重点的に見ることにします。

本当は前日入りしたかったのですが、家庭の事情により当日入りとなりました。
石垣空港に到着したのは10時半。もう始まっています。


到着ロビーに鎮座する旗頭。

タクシーに乗るという手段もあったのですが、貧乏性の私はついバスに乗ってしまいました。空港からANAホテル間をノンストップで行く準急便でも市街地まで40分かかります。乗ってしまったものは仕方がないので、目指す登野城地区の米為(イヤナス)御嶽に一番近い「みんさー工芸館前」バス停で降ります。

祭りをやっているっぽい音が聞こえる方へ歩いて行ったら、近くの運動競技場で行われていた中体連の応援の太鼓の音に騙されていました。

そんなこんなで米為御嶽に着いた時には、ちょうど儀式が終わっていたのでした。


すでに片付けて移動し始めていた。


供え物をして祈願をした後のツカサ(神司)。石垣の奥にイビ(御嶽で最も神聖な場所)があります。

午後の会場である登野城の天川(アーマー)御嶽に移動して、しばし昼食休憩に入ります。


天川御嶽(アーマーオン)って響きがかっこいいと思う。

14時。登野城の天川御嶽に旗頭が入場して拝礼、字長さんの開式の言葉で行事がスタートしました。拝殿でツカサ(神司)が見守る中、男性らによる「ミシャグパーシィ(神酒奉納)」の儀式が行われます。「ミシャグパーシィ」は、豊年を喜ぶ古謡を歌いながら神酒の入った角皿(ツノザラ)を左右に揺らし、飲みます。

ミシャグ(神酒)には、米神酒が用いられています。昔は、虫歯のない若い女性が噛んだ米を発酵させて作っていたそうです。現在のミシャグはアルコール発酵していない、ほんのり甘い冷やした全粥のようです。ドロドロしたデンプン糊みたいなので、バリウムを飲む要領だと食べやすいです。あ、まずいって意味ではないですよ。観客席にも2Lペットボトル入りで振る舞われましたが、私は遠慮して1杯だけ飲ませていただきました。


ごちそうさまでした。

続いて拝殿の前の庭では、婦人会や小中学生、地域住民らによる奉納芸能と、テント下の観客席では祝宴が始まります。


婦人による巻踊り。

道具をもったり手踊りがあったり、いろいろ演目があります。


歳のせいか、こういう子供らの演舞を見ると泣けてくるようになりました。

そして、優良生産農家表彰が行われ、余興である舞台芸能へと続きます。


「さとうきびの部」「水稲の部」などの生産者が表彰されていて、農業に直結した祭だと感じさせます。

石垣市無形文化財「大胴小胴と太鼓の段の物」。本土風の影響をうけた演目のようでした。
定番の「稲しり節」。

登野城では舞台芸能終了後、行事の最後を棒と獅子舞で締めくくります。


躍動感みなぎる棒術。かっこいい!

やっぱり、棒術は祭りの花形ですね。

これも棒術?
食うか食われるかの図に見えますが、じゃれあっています。


獅子がくす玉を割ってフィナーレ。

棒術と獅子舞で最高潮を迎え、登野城でのすべての行事が終了したのは18時すぎでした。

 

実はこの後、石垣市宮良の豊年祭へハシゴしたのですが、通称「アカマタ・クロマタ」と呼ばれる来訪神が現れるこの祭事は、一切の記録・撮影ができません。
集落外からの見物客は、あまり歓迎されないようなので、私の記憶に大事にしまって、今回はあまり触れないことにします。
じゃ、書くなって?ごめんなさい、念願の「アカマタ・クロマタ」を見られて凄く嬉しかったんです。
厳粛な祭事ですので、もしどうしても見に行きたいという方は、くれぐれも地元のルールに従ってご覧くださいね。


この看板を撮るのはセーフですか?

 

2日目「ムラプール」

翌2日目のムラプールは、接近する台風9号の影響で、開催も危ぶまれたのですが、午後の行事を早めに始めることになりました。

午前中は各字の御嶽で祈願が行われますが、今日は新川の行事に密着することにします。


午前中に行われた、真乙姥(マイツバ)御嶽でのミシャグパーシィの祭事。

13時45分頃、風は強く、時折大粒の雨が降る中、長崎御嶽で奉納が始まりました。


長崎御嶽に集まる新川と双葉の人々。

記旗(シルシバタ)と五穀を持った稚児たちを先頭に、村の役員や婦人の踊り、鼓(ツヅン)や農作業を表した踊りの青年らの奉納行列が御嶽の庭に入ってきて、奉納舞踊(スナイ)が行われます。

後ろの子が持っているのが五穀。
たぶん「稲摺り」。


長崎御嶽は広いので、巻踊りも広々できますね。

各御嶽での祭事を終えると、四ヶ字の奉納行列が旗頭を操りながら新川の真乙姥(マイツバ)御嶽に集結します。

旗頭は各字2本づつあり、デザインも豊かです。旗文字には、「請福(ふくをこう)」や「五風十雨(ごふうじゅうう)」、「和衷協力(わちゅうきょうりょく)」など、豊穣を祈り、協力し合い平和を願うなど、さまざまな意味が込められています。


太陽、蝶、胡蝶蘭・・・etc

強風で旗がすごくはためいてます。

昨日は晴天に旗頭が映えたのに・・・。
重い旗頭を、持ち手は1人で腰に巻いた帯にかけて支えながら前進します。

周囲の仲間が紐で垂直にバランスをとる手助けをしますが、上部に大きな飾りがあるので強風にあおられ、すぐに倒れそうになるのでなかなか進むことができません。
それでも、揃いのはっぴを着た男達が、力を尽くして旗を持ち歩く姿は勇ましいです。


いつ倒れるかと、支える方も見る方も緊張感が・・・。

 

15時半頃、主催者である字新川のツカサ、役員が御嶽に入り、ムラプールの行事が始まります。
拝殿で儀式が執り行われ、市長の挨拶など式典をすませると、最初に新川が御嶽に旗頭を奉納します。長崎御嶽と同じように、奉納行列が御嶽の庭に入ってきて、拝殿に向かって奉納舞踊を行うと、続いて巻踊りや各字の音頭などの芸能が次々に奉納されます。

太鼓隊の奉納。
鎌で草刈りしている様子?

引き続き双葉公民館、大川、石垣、登野城字会、JAおきなわ八重山地区本部、石垣島製糖、石垣市役所、八重山農林高校などの団体が、旗頭や太鼓、巻踊りなどを披露していきます。

各団体の奉納終了後、18時頃「五穀の種子授けの儀」があります。

西から真乙姥御嶽の神女、東から老人の姿で稚児を連れた五穀豊穣の神が現れ、神から神女に五穀(稲、粟、麦、大麦、甘藷)の種子を手渡します。

手前の神様で見えないけど
奥でツカサが五穀を受け取っています。

無事に種子が渡されると、次は女性のみで行われる「アヒャー綱」の儀式とうつります。

今年「ブルピトゥ(棒貫人) 」に選ばれた一人の女性がツカサから棒を受け取り、雌雄の大綱をつなぎ合わせると、取り囲んだ女性たちが「サァー、サァー、サァー、サァー」と掛け声を上げながら「ガーリ」と呼ばれる乱舞をし、一気に盛り上がります。

誇らしげなブルピトゥ。
担がれて移動するブルピトゥ。

アヒャー綱の後、旗頭とともに綱を御嶽前から200mほど西へ場所を移動します。

しかし帰りの飛行機に乗る時間が迫ってきたため、ここで取材はタイムアップ。
後ろ髪を引かれる思いで、今度はタクシーで空港に向かいます。
余計な情報ですが、空港まで運転手さんに急いでもらって約30分、3,010円かかりました。移転前の空港の感覚でいると痛い目をみますので、気を付けましょう。


最後まで見られなくて無念なり。

その後、日が落ちるのを待って19時過ぎに祭りの最大のハイライトである「ツナヌミン」が行われます。
綱の東から長刀、西から鎌を持った武者が板の舞台の上に乗せられて、綱の中央で演武を披露します。松明に照らされる中演舞する姿は、勇壮で素敵なのですが、写真が撮れなくてすみません。
最後は東西に分かれて市民や観光客たちが大綱を引き合い、祭りは終了します。


雄綱(写真奥)の先端を雌綱(手前)の輪の中に入れて、カヌチ棒でつないで曳きます。

今年は台風の影響で、1時間ほど早めにスタートしたはずでしたが、結局例年通りの時間に終了したようでした。

今回紹介できたのは一部ですが、石垣島内だけでも多くの集落で同時期に豊年祭が行われています。ネットで探せば日程も出ているので、日程が合えば複数の字を訪れてみてはいかがでしょうか。
ちなみに、今年の平成26年12月14日に、国立劇場おきなわで「石垣島四ヶ村のプーリィ(豊年祭)」公演があるそうなので、豊年祭の雰囲気を味わうことができるかも・・・!?

 

ゲストライター

AYA
プロフィール:生まれも育ちも沖縄本島。県民に多い苗字ベスト3入りする苗字だったのに、九州出身の旦那をもったばかりにイチイチ説明が面倒くさい苗字に。殺人事件が起こるドラマが好きでしゃべる機械キャラ萌え。
 

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