2019.05.10

編み物で沖縄そばを作るZAORICknitknitさんに会ってきた

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毛糸でできた沖縄そばやタコライス、なんだか湿っていて触るのを躊躇してしまうようなサンゴ(良い意味で!)。そんな不思議な編み物を作っている作家さんに会いにいってきた

面白い方のかぎ針編みの世界

かぎ針1本でなんでも作ってしまう編み物作家さんがいる。
その名を植月 沙織さん。通称ZAORIC(ザオリク)さん。名前がドラクエの復活の呪文なのですがここはあまり気にしなくてOKです。

ZAORIC(ザオリク)さんの作品は沖縄そばから、サンゴ、動物まで多岐に渡るのですが、なぜかぎ針でいろんなものを作るに至ったのか、またどうやって作っているのかを聞いてきました。

かぎ針沖縄シリーズが生まれた理由

- 編み物を始めたのはいつ頃なんですか?

4歳か5歳の頃です。母が棒針で編み物をやっていて、自分もやりたいと思ったのが最初。
でもまだ小さくて棒針で編み物なんかできないので、これなら、と母が渡してくれたのがかぎ針だったのです。
かぎ針のもっとも基本的な「こま編み」を教えてもらって、母の横で編んでいました。


かぎ針編み

- じゃあもう30年ぐらい編んでいるんですね!

いえ、そうじゃないんです。やはり小さかったので、全然できなくて。母が棒針でセーターなんかをきれいに作っているのに、わたしが編むものはガタガタで、ちゃんと形にもならない。それがすごく悔しくて、かぎ針だからできないんだ!棒針がいい!と駄々をこねて、棒針を持たせてもらったけど余計何もできなくて。もう編み物は嫌だーって投げ出しました。
なので幼少の頃から編み物に没頭していたわけではなく、幼少の頃に少し触って、それからブランクが空いて、その次にかぎ針を触るのは23歳です。

- 何がきかっけで再度かぎ針に触れたんですか?

23歳で長女を出産したので、赤ちゃんの靴下を編んであげようと思って。良い理由でしょ。
それで、かぎ針をほぼ20年ぶりに触るんですけど、編み方はなぜか覚えていたんです。ああ、そうだそうだと思いながらやって、編み図を見ながら靴下を編み始めたんですが、10分で飽きて投げ出しました

- そこからハマるパターンかと思ったらまさかの!?

編み図を見ながら編むのが全然楽しくなかったんです。なんだこれ、と。時間もかかるし、毛糸代とか考えたら買った方が安いじゃないかと思って。
赤ちゃんの靴下なんですけど、人目に触れるので黒い毛糸で編んでいたんですね。黒ければアラが目立たないだろうと。でも片方だけ靴下を編んでもう嫌になってしまって。
だからもう片方の靴下を作らずに、余った黒い毛糸でこま編みを続けてイラブーの燻製を作ったんです。靴下をそのまま長ーく編む要領で最後に中に綿を詰めたらイラブーの燻製みたいになるでしょ。

- 赤ちゃんの靴下がイラブーの燻製に..

そのイラブーの燻製を姉に見せたら「これ、めっちゃええやん!」って喜んで。姉は関西人バリバリの感性なので面白いのが好きなんです。
「で、次なにつくるん?」って言ってくるので、次はゴーヤーを作りました。同じくこま編みでイラブーを太く短くしたらゴーヤーになりますよね。たまたま家にボコボコした毛糸があったので、そのまま編んだらゴーヤーのブツブツも再現できました。
「で、次は?」って言われるので、色の違う毛糸を組み合わせてサーターアンダギーを作って、ちんすこうを作って、紅芋タルトを作って。子供があと2人増えて3人の子供の育児をしながらなので、空いた時間にときどき作る感じで。

ナーベーラー
紅芋タルト

- 編み物って編み図を見ながら編むイメージですが、ZAORICさんが作るときはどうやって編むのですか?

実物や写真を見ながら編み方を自分で考えます。
靴下を片方作った段階でわたしは編み図を読むのは向いていないとわかったので、大体の予測を立てて編み始めて、あとは編みながら考えます。ここちょっと大きくしたいなと思ったら編み目を増やして、くびれが欲しい時は減らして。こういう編み方をクリエイティブ・ニッティングと呼びます。海外ではやっている人がいるんですが、日本ではその当時はあまりいませんでした。


タコライス

 

2011年に本格的にZAORICknitknit始動

- ZAORICknitknitをはじめたきっかけを教えてください

姉が雑貨店を始めたんです。そして「お店の一角で面白い編み物のワークショップをやれるようにしたから」と言われて。え、どうしようと思っている間に、チラシを作られて配られて。姉はそういうところがものすごく早いんです。
そこまでされたら覚悟を決めてやるしかないと思って、のーまんじゅうを作るワークショップをやりました。ワークショップはいまも定期的にやっているんですが、京都からわざわざ来て参加してくれた人もいました。終わった後に「すごく楽しかったけど、今日作った"のーまんじゅう"って何?」って言ってましたけど(笑)「首里の儀保にね」って編み物教えるのにそこから話すんかい!という。
※現在のワークショップではのーまんじゅう以外のものも教えてもらえます

- これまで一番作るのが難しかったものはなんですか?

某テレビ番組の依頼で筋肉を作って欲しいと言われて。オッケーオッケーと受けたら、人間の体の全筋肉を作る仕事だったんです。最初は30個ぐらいと言われてたはずなんですが、蓋を開けたら作る筋肉は100個でした。しかも来週の放送で使いたいからと言われて。平面ではなく立体にしないといけないので、筋肉の裏や横がどうなっているのかがわからないといけないんです。筋肉の裏側とか見たこともなければ見たいと思ったこともありませんでしたよ。あと横隔膜ってすごく大きいの知ってますか?

最初はPCで見られる3Dデータを探してきてそれで細部を見ようと思ったんですが、ものすごくデータが重くて買ったばかりのPCなのにファーって鳴って動かなくなった!
PCじゃ無理だって諦めたときに、たまたま同じデータを本にした医学書が本屋さんにあることがわかったので「買うから絶対に売らないで!」ってすぐに電話して。

テレビ番組からは本番で使うのと同じ180cmの骨格標本が送られてきました。段ボール箱を開けたら死体が入っているのかと思うぐらいの本格的なやつ。そこに医学書と格闘しながら全筋肉を作ってつけていくんですけど、作っても作っても全然終わらずに3日間徹夜しました。今思い出しても泣ける。ちなみに一番作るのが難しい筋肉は骨盤の中にあるインナーマッスルの骨盤底筋です。

- もはや編み物の話を聞いている気がしません!

 

編み図がないから、出来上がるのは自分らしい世界

- ZAORICさんが編めないものってあるんですか?

編めないというか、今まで作った中で自分が納得できないと思うものは2つあって、ひとつはポーポー。
30回ぐらい編んだんですが、そのまま板状に編んだものを巻いても茶色いものが巻いてあるだけでポーポーに見えない。切った状態を再現しようと編んだら竹にしか見えない。シンプルすぎるものって編みにくいと思いました。


写真はちんびんですが、ポーポーもこんなのです

もうひとつは馬。これも何度作っても、あみぐるみのようなファンシーな感じの馬しか編めなくて。動物は人気があるのでいろいろ作るんですが、かわいらしいものじゃなくて味のあるものを作りたいので、どうやったら私らしい馬が編めるのかというのはまだ模索中です。

ZAORICらしいやつ:マントヒヒ
ZAORICらしいやつ:きりん

あ、あと編み図を元にしたセーターも編めません。靴下もいまだに片方は編めてないし!(笑)
逆に、講師もやっているようなプロの方は、わたしの作ったものを見て「どうやって編んでいるんだ」って頭を抱えられます。編み図を見せてと言われますが、そんなものないので、ワークショップで一緒に編みながら「ここで2目増やして、ここで逆に減らせば、タコの足のうねうね感が出ます」って解説しても「全然意味がわからない」って。
ワークショップをやっていて思うのが、考えて編む方よりも勢いで編む人がクリエイティブ・ニッティングに向いている。かぎ針編みは多少間違えても致命的なことにはならないので、間違えた時に糸を解いて戻るのではなく、「これも味」と思える人が最終的にどんどん作品を作れる気がします。


かぎ針講師の方が編めなかったらしいタコ。人には向き不向きがあるようです

- 沖縄シリーズから始まって、いまはいろんなものを編んでいるんですね

最初に編んだのが黒い毛糸だったからイラブーにして、その後も沖縄シリーズを編んでいたんですが、もしかしたら最初が緑の毛糸で編んだのがニシキヘビだったら、最初からぜんぜん違う方向に行っていたのかもしれませんね。
でも2017年にファッションとデザインの合同展示会「rooms EXPERIENCE」に参加させてもらったんですが、その時にサンゴを編んで持って行ったんです。ちなみにサンゴを立体で作るには石を彫ったり紙を折ったり、棒針で編んでも正確に再現するのは不可能で、唯一再現できるのがかぎ針らしいです。あ、サンゴを持っていった話ですね。
かぎ針でサンゴっていろんな国の人が作っているんですが、同じようにサンゴを作っても、ノルウェーの人が作るサンゴは北欧家具のようにおしゃれで、オーストラリアの人が作ったらグレートバリアリーフのようにきらびやか。そして私が作ったサンゴは沖縄の海洋研究をしている人に「沖縄のサンゴっぽい!」と言われました。なので沖縄を意識したものでなくても、自分の中の沖縄が作品に現れるのかなと不思議な感じでした。

クブシミ
ウミウシ

- 最後に今後の目標があれば教えてください

できれば来年、台湾で個展をしたいと思っています。お店に台湾の人がよく作品を見に来てくれるので、台湾でやってみたいと思っていて。
それと今まで子育てをずっとしていましたが、子供が大きくなったのでそろそろ外国に遊びに行きたいというのもあります(笑)

 

手の中から生まれる沖縄

ということでZAORICknitknitさんにお話を伺いました。
実はわたし、数年前に全10回のZAORICknitknitかぎ針編み講座に参加したことがあり、そのときになんでも作れるよ!と聞いたのでミルク様を作りたい!と熱望してかぎ針でミルク様の作り方を教えてもらったのです。
1週間ちょうだいと言われて、翌週には見事なミルク様の全身を作ってこられました。で、それを元に一緒にいちから作ったのですが、まぁ工程が多いこと多いこと。よくこれを何もない状態から考えたな!と思いました。


わたしは最終的に力尽きて途中で放棄してしまったんですが。顔も作ったはずだけどなくなった

何が言いたいかというと、ZAORIC先生はマジで天才ということです。何を見ても、どうやったら編めるかを頭の中で妄想しているらしいですよ。怖いね。

作品を見たい方、買いたい方、またはワークショップに参加してみたい方はぜひ下記までお問い合わせしてみてください。
大丈夫。とって編まれたりはしませんから。たぶん。

ZAORICknitknit

http://zaoric-knitknit.me/
てれふぉーじ:作品が多く置いてある北谷のお店(ZAORICさんもだいたいお店にいる)
ワークショップ:Triangle studio and lounge(沖縄市)

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