2021.01.06

ありがとうさようなら琉球銀行旧本店

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2020年末。那覇市久茂地にある琉球銀行本店が老朽化による建て替えのために営業を終えた。米軍統治下に建てられた建物はどのようなものだったのか。内覧会のようすとともにレポートします

BANK OF THE RYUKYUS

2020年12月、那覇市久茂地にあった琉球銀行本店ビルが老朽化に伴う建て替えのため営業を終えました。
本店ビルが建設されたのは1966年の米軍統治下で、当時のアメリカの先進技術が詰まった歴史的な建造物でした。

ちなみに琉球銀行を英語表記すると「BANK OF THE RYUKYUS」。
普通に表記すると「BANK OF RYUKYU」のはずなのにTHE RYUKYUS

これも歴史的な背景があり、RYUKYUSは琉球列島を意味しているそう。
もともと琉球銀行は1948年に米国民政府によって沖縄の中央銀行として設立された特殊銀行でした。
1966年に本店ビルが久茂地に建設される前は、東町にあった戦争で焼け残った旧鹿児島銀行跡(だったはず)を使用。
琉球銀行のサイトによると「設立初期の業務内容は、米国軍政府資金の預託機能や一般銀行業務に加え、通貨発行権、金融機関の監督統制権、加盟銀行に対する援助、不動産債券の発行権など、中央銀行的色彩がきわめて強いもの」だったようです。

現在の普通銀行になったのは本土復帰した1972年からですが、英語表記に残る名前には復帰前の沖縄を支えてきた気概のようなものを感じることができます。

琉球銀行本店ビル内覧会

本店ビルでの営業を終える前の2020年11月14日には「琉球銀行本店ビル内覧会」が催され、事前予約した50名限定でビルの内部が一般に公開されました。
ただしそのときはまだ本店ビルの営業中だったこともあり、撮影できる場所も限定され、写真をネットでの公開することも禁止でしたが、現在は営業を終えて取り壊しに入ったので琉球銀行の許可のもと、当日のようすをレポートさせていただきます。

10名ほどが1組となり、まず案内されたのは2020年夏頃まで使用されていた地下にあるメイン金庫。
この金庫は落成当初から現金や重要書類が保管されていたそうです。

めちゃくちゃ重そうな扉。

扉は重量約800キロ、厚さは30センチあるそうです。
あとで開け閉めしてみていいよと言われたのでさせてもらったのですが、腰から力を入れないとビクともしなかったです。

アメリカ・モスラー社製。
期待しましたが、金庫の中身はすでになにもありませんでした。

金庫の後ろは人がひとり通れるぐらいの細い螺旋階段。
大勢の人が一気にこの場所に来れないようにしていると言っていました。

映画でしかみないようなエレベーターもありました。

すごいシンプルなボタン。

 

アメリカ様式が残る建物内

自家発電機らしいです。

これも落成当時から2020年末まで使われ続けていました。

応接室。

アーチ状の窓と青いガラスが特徴。
窓は全て密閉されていて、当時では画期的な全館冷暖房完備の建物でした。

窓と一体にデザインされた空調ダクト。

外から見ても特徴的な青いガラスは、新しく立て替える本店ビルでも使用を検討しているそうです。

落成当時は3階建てでしたが、もとから計画していたそうですが、あとから4階、5階は増築されています。
継ぎ目も違和感もない増築すごい。

設計図。
青焼き手書き図で、寸法はフィートやインチが使われ、英文で記載されていました。

業務中とのことで写真には写せなかったのですが、業務スペースには柱や梁がなく、めちゃくちゃオープンなスペースになっていました。
これは沖縄の民間建築物では初めて採用された「プレストレス工法」という工法で、あらかじめスラブに高強度の鋼線を引っ張る力を加えて床を固定していたそう。
またすでに使用されていないとのことでしたが、エアシューター(「吹き矢」の原理でカプセルに入れた書類を離れた部屋に飛ばせる)など最新の仕組みも採用されていました。

設計はアメリカのライアン設計事務所が米国民政府と沖縄米国陸軍工兵隊の監理の下で行っていますが、施工は沖縄の建設事業者です。琉球銀行本店建設がアメリカの多くの最新技術を沖縄の業者が取り入れるきかっけになり、その後の沖縄建設を促進することにもなったそうです。

こちらももう使われていませんでしたが、建物側面には「ドライブインバンキング」の窓口跡。
車を横付けして、マイクを通じて行員とやりとりをし、現金を受け取れる機能をもっていました。

ATMのはしりです。

 

建て替え工事はじまる


まだ建物自体は残っているので、見納めするなら今しかありません

2021年明けての琉球銀行旧本店。
本店営業部、那覇ローンセンター出張所等は昨年12月に仮本店ビルへ一時移転しました。

1月5日からは本格的に解体工事がはじまりました。
本当は解体前にもう一度取材させていただく予定でしたが、いろいろあって叶わず。柱のない広いスペースとか、随所に残る英語表記などを残しておきたかったのですが残念です(何かの偶然でもし持っている方がいたら連絡ください)。

新しい本店ビルはホテル機能も持った地上13階建てで、2025年に完成予定とのこと。
50年以上にわたって那覇の代表的な建物だった琉球銀行旧本店ビルがなくなるのは寂しいですが、新しいビルに青いガラス窓などが引き継がれて使われていたら、こみあげるものがありそうですね。

多くの沖縄県民に親しまれていた琉球銀行旧本店。
さようなら、今までありがとうございました!

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