2014.01.21

幻の沖縄料理?ルクジューを食べてみたい

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とある一冊の古書で紹介されていた昔の沖縄料理「ルクジュー」。紅型の道具で同じ名称のものがありますが、まさか食べられるものが存在するなんて。今回はそんなルクジューの作り方を教わってきました。

キミはルクジューを知っているか

以前DEEでご紹介した宜野湾市にある老舗古書店「BOOKSじのん」。
取材に訪れた際、店員の方から「面白いのが載っている本がありますよ」と、とある本をおすすめされ購入しておりました。
そのとある本とは、沖縄タイムス社発行『おばあさんが伝える味』

1979年初版発行というもう30年以上前の古い本ですが、内容はまさにタイトルどおり沖縄のおばあさんたちが食べていた沖縄の料理を、編集者が聞き取り形式で一冊の本にまとめたもの。チャンプルー、ラフテー、スーチカーなど現在でもよく耳にする沖縄料理から、豚肉に黒ゴマをまぶして蒸した宮廷料理「ミヌダル」やかまぼこにネギをぐるぐる巻きつけた「びらがら巻ち」など、あまり馴染みのない料理まで様々な料理が掲載されています。

そのなかでも私がひときわ興味をそそられたのが「ルクジュー」という料理。
ルクジューということばそのものは紅型に詳しい人ならば聞いたことがある人があるかもしれません。紅型の型を彫る際に下敷きとして刃の下に敷くもので、原料は豆腐でできていると紅型職人の方に聞いて驚いたことがあります。

そのルクジューがまさか、逆に料理として食べられるものが存在していたとは...。二重の驚きです。
しかし、ネットで調べてみても周りのウチナーンチュに聞いても誰も食べるほうのルクジューに関して詳しい情報はおろか、その存在さえも知っている人が見つからず。私のなかでもはや幻の食べ物と化していたのでした。

そんな折、テレビ番組『ウチナー紀聞』のDEEokinawaコラボ企画第二弾のお話があり、ディレクターさんに駄目元でルクジューを取り上げられないかと相談してみたところ、数日後になんと手がかりがみつかったとの朗報が!!リサーチ力のすごさよ!!!

というわけで今回は、食べられるほうのルクジューについてお届けしたい思います。
 

ルクジューを求めて西大学院へ

『ウチナー紀聞』取材クルーに連れられてやってきたのは、南城市知念にあるフィニッシングスクール『西大学院』。静かで自然豊かな環境にあり、料理・家庭管理・健康管理をはじめとした知性や教養を磨く女性のための学院です。

応対してくださったのは学院長である西大八重子先生。
作り方を教えていただく前に、まずルクジューについていくつか質問をさせていただくことにしました。

ールクジューはいつ頃まで食べられていたものなんですか?

「いつ頃から食べ始めたのかということははっきり分かっていないのですが、私の主人が塀の上でおばあさんたちが豆腐を干しているのを見たことがあると言っていたので、終戦直後まではあったようです。」

ーどういう時にどんなふうに食べられていたものなんですか?

「生年祝い・トゥシビーとかのお祝いにルクジュー(60歳)を2つ重ねて120歳まで長生きを願うということで、祝いの席に出されたということが文献に書かれています。私が実際にルクジューに出会ったのは、尚順男爵の六女である知名茂子さんからルクジューの作り方を直接教わったことがきっかけでしたね。」

ーでは普段食べるようなものではないんですね。

「いえ、それが男爵家ではお父様が毎日のようにルクジューを召し上がっていたんだそうですよ。」

ー男爵はかなりルクジューがお好きだったんですね。ちなみにどんな味がするんですか?

「そうですね、においは少し強烈な感じなんですけど(笑)いただくと旨味とコクがあって、熟成した風味がなかなか乙な味です。」

ーちなみにどこの地域で食べられていたとかはあるんですか?

「首里の比較的裕福な家庭で食べられていたようです。あまり一般家庭で食べられるようなものではなかったようですね。」

なんと、西大先生は琉球王国最後の王・尚泰の四男で食通としても名を馳せた尚順男爵の六女にあたる方から直々にルクジューの作り方を教わったお方!
ということは、かつて王宮などで食べられていたオリジナルの味に限りなくに近いものに仕上がるはず。その貴重なルクジューの作り方を今回教えてくださるというのです。

なんと、なんとありがたいお話か...!
 

早速ルクジューを作ってみる

というわけで学院の調理室をお借りしてルクジューの作り方を教わることに。

材料は島豆腐一丁のみという潔さ。以前の記事「東京で作る沖縄料理は高いのか?!(ゴーヤーチャンプルー編)」でも触れていましたが、沖縄の島豆腐は本土の豆腐と異なり、1丁1kgが一般的。とにかくその存在感に圧倒されます。

島豆腐を八等分にカット
ボウルに塩水を用意

塩水の濃度はだいたい水4カップに塩大さじ2杯ほど。この塩水に、カットした島豆腐をひとつずつさっとくぐらせてざるにあげ、軽く水気をきっておきます。このとき塩水を使うのは、日干しするときの保存効果を高くするためと、仕上がったときの味付けにもなるのと2つの理由からなのだそう。

塩水にくぐらせた豆腐を屋外に設置したざるの上に切断面が上になるようにして重ならないよう並べていきます。

ざるに並んだ状態。このまま数日のあいだ天日干しをして、乾燥させていくのだそうです。乾燥させる日数はその時その時の天気や湿度、風の具合に応じて日数は変わってきますがだいたい3〜4日程度。時々豆腐をひっくり返したり、雨が降れば軒下に取り入れたりとしっかり「お世話」をすることが大切なのだそう。

西大先生にルクジューを作るのに適した時期があるのかどうか伺ってみたところ、新北風(ミーニシ)が吹きはじめる頃がルクジューを作るにはちょうどいい季節とのことでした。確かに蒸し暑い沖縄の気候だと乾燥させている間に腐敗してしまう危険性もあるわけです。
 

ついにルクジューとの初対面

というわけで豆腐を干し始めたわけですが、3日も4日もこの場所にみっちり張り付いているわけにもいかないので今回は西大先生が事前に準備してくださっていました。

rukuju09.jpg

これが3日間干した状態の豆腐。全体がほんのりと茶色くなり、高さはほぼ半分ぐらいに。フチは特に乾燥して濃い茶色になっています。

「ちょっと触ってみて。」
西大先生に言われるがまま豆腐を指で触ってみると・・・

ネトネトとした糸を引きました。指に伝わる感触は弾力があり、ねっちりと指に吸い付くようです。そして、なんともいえない大豆をぎゅっと濃縮したような香ばしい香りが漂っています。

西大先生によると、このときの感触と香りで発酵を見極めるのだそう。ちょうどいい具合に発酵すると、豆腐からナンプラーのような香りが立ってきます。現代ではカバーのついた干し網などに入れて干すことができますが、そんなものが無かった時代にはその香ばしい香りにつられて虫が寄ってきたので、それも発酵の目安になったんだとか。ルクジューは生で食べることは無いので多少虫がついても気にしない!というわけですね。

難しい手間はかからないルクジュー作りですが、いちばんのポイントは発酵具合の見極め。
発酵しすぎても逆に未熟でも美味しいルクジューにはならないのです。

炭火で両面がキツネ色になるまでじっくり炙り焼き
ルクジューの完成!

お餅を焼いた時のような香ばしい香りが漂い、少しきれいな焦げ目がついたら完成です。
ついに幻のルクジューを口にする時がやって来ました。果たしてどんな味がするのでしょうか。


(ドキドキドキ・・・)


「おお〜!」

第一印象はめちゃくちゃ濃い豆腐(そのままですが)。
大豆の旨味がぎゅっと凝縮されていて、鼻の奥にほんのりとチーズや味噌のような発酵食品独特のふくよかな風味も感じます。また炭火で炙っているので表面がパリっとしていてとても香ばしく奥深い味わい。中は思ったよりふわふわとして豆腐の良さが残っていました。

ひとくち食べて「美味しい!」と言えるような単純な美味しさではないですが、じんわりと滋味深く噛めば噛むほど旨味が染み出してきます。

豆腐はもともと東南アジアのほうから伝わってきた食べ物なので、インドネシアや中国のほうではこのルクジューとよく似た豆腐を炭火で炙ったような料理が現在も日常的に食べられているそうです。
 

揚げルクジューはスナック感覚

ルクジューを頬張っていると、西大先生がもう一品作ってくださいました。

ルクジューを包丁で薄くスライス
180度の油でカラッと揚げる

なんと「揚げルクジュー」です。さきほどのように炭火で焼く他に、こうして油で揚げて食べる調理法もあったんだとか。

こちらは表面サクッ!中はもちっ!としていて揚げたてがとても美味でした。塩気が足りなければあとからちょっと塩をふりかけても良し。おやつやおつまみにぴったりなお味です。ポテトチップス感覚でサクサクいくらでも食べられそう。

最後に西大先生がこんなことをおっしゃっていました。

「今ではルクジューの存在を知る人もすっかり少なくなってしまったけれど、豆腐は健康食としても注目されている食材なので、これからもこの味をしっかりと次の世代に伝えていきたいですね。」
 

ルクジューをどうしても食べてもらいたい人がいる

というわけでめでたく念願のルクジューを食べることができたわけですが、せっかくなのでこのルクジューを是非とも食べてもらいたい人がいる那覇市首里へと移動することに。

到着したのは、王朝時代の紅型三宗家と言われる「城間家」「知念家」「沢岻家」のひとつ、脈々と伝統の技を受け継ぐ城間びんがた工房。というかええんか、こんなとこに私みたいなのがこんな用件で訪ねて。

奥にいらっしゃるのが、黙々と作業に打ち込む城間びんがた工房16代目の城間栄市さん。16代目...!沖縄伝統文化の重みを感じ、ルクジューのようにぎゅっと圧縮される私の心臓。

そんな心情を知ってか知らずか、めちゃくちゃ気さくに笑顔で応対してくださる城間さん。
紅型職人である城間さんにとってはルクジューはあくまでも仕事道具。食べるものという認識はありません。そんな城間さんに是非食べるほうのルクジューを味見していただきたかったのです。

ちなみにこれが型彫りの際に使われるルクジュー。どちらも名称は同じ「ルクジュー」で形もよく似ていますが、用途は全く違うものなのです。


戸惑いつつもパクリ。


「あ・・・豆腐ですね(笑)」

普通に美味しく食べられるけど、噛んだ時にふわっと鼻に抜ける香りが道具のルクジューと同じなので、なんともいえない複雑な気持ちになるとのことでした。ちなみに城間さんの先輩で紅型のルクジューを試しにかじってみたことがある方がいるそうですがばっちりお腹をこわしたそうです。

作業中おなかが空いたときに思わず道具のルクジューをかじってしまわないように、食べるほうのルクジューも作っておくといいと思いますよ、と16代目に向かって勢いに任せて無茶なアドバイスをしてしまったのですが今となっては後悔しています。



というわけでたくさんの方のご協力のもと、幻の料理「ルクジュー」についての謎が明らかになり、またひとつ沖縄の謎を解くことができました。というかDEEokinawaだけではここまでの取材は到底無理でした。
西大先生、城間栄市さん、『ウチナー紀聞』取材クルーのみなさん、本当にありがとうございました!

興味を持った方は、これを参考に是非おうちでルクジュー作りに挑戦してみてくださいね。
最大のポイントは発酵の見極め。発酵させすぎて腐らせないようにご注意を。


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フィニッシングスクール西大学園
〒901-1502
沖縄県南城市知念安座真860
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〒903-0825
沖縄県那覇市首里山川町1丁目113

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