アバサーでフグ刺を堪能できるのではないか

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アバサー(ハリセンボン)は沖縄では魚屋に並ぶ、無毒のフグである。ということはアバサーの刺身をつくれば手軽にフグ刺しを堪能できるんじゃないだろうか。

さて、本日はアバサーの話です。

過去何度かネタにしてきたので県外の皆様もご存じの事かと思いますが、ハリセンボンを沖縄ではアバサーと呼びます。


皮を剥かれるとなんだかかわいそうな姿に

そしてこのアバサーですが、沖縄では皮を剥かれた姿で食材として魚屋に並んでいます。アバサーはフグですが、無毒。唐揚げにしたりもするらしいですが最もポピュラーな食べ方はアバサーでつくるみそ汁「アバサー汁」じゃないかと思います。


公設市場の2階で食べたアバサー汁。1200円。

アバサー汁はクスイムン(薬効のある食べ物)としても認知されていて、のぼせを下げる「サギグスイ(下げ薬)」の効果があるんだそうです。

アバサーの肝
浮き袋

アバサー汁は肝を潰して入れるために、ちょっとした臭みがありますがフーチバーを入れて臭みを消すことが多いみたいです。フグの仲間なので魚の味は淡泊な白身。プルプルした部分も結構あります。肝はといえば、鱈の肝にも似た感じで濃厚な味を楽しめます。

で、アバサー汁の味はさておいて本題なんですがこの前アバサー汁を飲んでいてふと気づいたのです。アバサーってフグの仲間じゃないですか。しかも無毒。ということはアバサーを刺身にすればお手軽にフグ刺しがたべられるんじゃないかと思うんです。

 

アバサーを調達しに公設市場に

というわけでアバサーを求めて那覇市の公設市場にやってきました。


海に捕まえにいくんじゃないのかよ!って思った方ごめんなさい。

この公設市場に行くくだりの前に、漁港でアバサーが捕まえられないかちょこちょこ探していたのですが、全然見つからず。ここは大人の対応(普通に魚屋で買う)を取らせて頂きます。

公設市場の1階にある鮮魚店を巡ると…

アバサーみっけ。値段は書かれていませんが、札には「からあげ」と書かれています。

鮮魚店のおばちゃんに「アバサーを刺身にして食べたい」という旨を伝えると、「あー。普通においしいよ」とのこと。なんでもアバサーの刺身は普通に食べられるらしいのですが、アバサー1匹から身が全然取れないのであまり刺身としてはオススメしないそう(お店でも刺身はつくらない。手間がかかるから)。

アバサー汁用だと身をぶつ切りにしてくれるらしいのですが、「刺身だからそのままでいいよね」ということで1匹そのまま買ってきました。お値段は2500円。想像してたよりも割と高いです。

 

アバサーから刺身を取りだそう

そんなこんなで事務所にやってきたアバサーくん。

ちょっと潤んだつぶらな瞳でこちらをにらみつけます。

浮き袋

あらかた内臓は処理されているみたいですが、肝と浮き袋はついています。これはアバサー汁に入れるためにつけて売られているのだと思われます。

それでは早速アバサーから刺身を取り出していきましょう。

とりあえず外しやすいところから、肝を取って酒に漬けておきます。

続いて刺身用に身を取っていくのですが、背骨に沿った身体部分には肉がついていて若干身が取れそうなので包丁で肉をこそぎ落としていきます。

結構肉が取れました。これは幸先がよいスタートです。

浮き袋を外した
肉を取った背骨を包丁でしごいて中落ち的な身を取る

しかし、背骨以外からなかなか身がとれません。頭はほぼ骨だし、頭の中あたりはプルプルした肉質で身をとるのが難しい状態です(文化包丁1本で挑んだ僕も無謀だった)。

取り外せそうな部位の骨についたわずかな身を慎重にこそぎ落としていきます。

格闘すること1時間余り…


身を取ったあとのアラはアバサー汁にしました。

取れた身少なっ…!

 

アバサー刺しはフグ刺しなのか

結構大きなアバサーでしたが、取れた身はほんのわずか。僕の魚を捌くスキルが低すぎる気もするのですが、嘆いてばかりもいられません。とりあえず取れた身を刺身として食べてみましょう。

そしてこんな時に限って事務所には僕一人。写真を自撮りするのはいいんですが、まかり間違ってアバサーに毒とかがあって翌日冷たくなって事務所で発見されるとかシャレになりません。

一応再度アバサーでググって本当に毒がないか確認しておきます。

大丈夫そうなので刺身、いってみます。

どれどれ…
…!

あ、これ、うまいやつだ。

残念ながら身を薄くそげなかったので、一般的なフグ刺しとは比べられないのですが、身はかなり歯ごたえがありかつ淡泊。しかし噛みしめていくと魚の旨味が広がります。

魚屋さんとかが、がっつり処理してくれるのであればもっと身は取れるはずだし「フグ刺し」に対抗して「アバサー刺し」を新しい沖縄名物にしても全然イケる気がします。

この結果に気を良くした僕は

アバサーの肝を
潰して醤油で和える

先ほど酒に漬けておいたアバサーの肝を潰して醤油と混ぜます。カワハギなんかで「肝あえ」というやつがあるので、アバサーの肝和えもいけるんじゃないでしょうか。

ちなみに「肝あえ」の作り方はクックパッドを参照したのですが、肝を生のまま使うレシピと肝をさっと湯がくレシピの二通りがありました。よく分からなかったのでとりあえず生のまま肝を使っています。


ちょっとした生命の危機

味見をしたいところなのですが、一般的なフグの肝臓は猛毒。アバサー汁にも入っていたので多分毒がないことは分かるのですが、ちょっと嫌な予感がします。仮にこれで死んだりしたら末代までの歴史残る珍事なんじゃないでしょうか。色々心の整理をつけて、肝あえを口に運びます。


どっこい生きてる!

普通にめっちゃうまい

ドキドキしながら食べてみましたが、肝のかすかな苦みと濃厚な味が淡泊なアバサーの身にからんでこれもまた美味。どっかしびれたりしないか心配でしたが、しばらく経っても体調にも変化なし。

いいよ!アバサー刺し!あとは事務所に温かいご飯があれば!

 

翌日判明する衝撃的な事実

というわけでアバサーを刺身にして食べてみるという本企画ですが「普通にうまい」ということが分かりました。他のフグは毒を持っているために調理には免許が必要でなかなか手軽に食べる事ができません。しかし無毒のアバサーを刺身にすることで手軽にフグ刺しが味わえるわけです。

まぁ冷静に考えると2500円のアバサーから取れた身がごくわずかだったので、コスパ的に考えるとフグ刺し食べに行った方が安いんじゃないのかという疑問も残りますが。

 

そしてこの話には後日談がありまして、翌日沖縄県の生活衛生課というところにアバサーについて念のため問い合わせたのです。

僕:
すみません。アバサーを食べたいと思うのですが、これって普通に調理していいんでしょうか。

職員の方
沖縄県では「フグ取り扱い」についての講習を定期的にやっているのでそちらを受けて頂く必要がありますね

僕:
…!

日本では各都道府県で条例があってフグ調理について免許が必要なのですが、沖縄県でもそれに該当するものがある模様。「これって自宅で自分用に調理するのにも必要なんですか」という問いに関しては「講習を受けることが望ましい」とのお返事。若干歯切れが悪かったのは沖縄では割と日常的にアバサーを調理しているので制度的にはフグに分類されるアバサーの調理にも免許的なものが必要だけどみんなそこまで守ってないってことなのでしょうか。

ちょこっと話を聞いただけなので「すでに魚屋で解体されたものを料理するのにも免許が必要なのか」とか詳しくは聞けなかったのですが、アバサー刺しを食べたいという方はこの情報もご留意くださいませ。

まぁそういうこともひっくるめて、フグ刺し食べに行った方が(略

本日は以上でございます。

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