生米を口噛みして沖縄のミキを作ってみる

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沖縄にミキという飲み物がある。このミキはもともと乙女が口噛みして作っていたらしい。じゃあ口噛みで作ってみようじゃないかミキを。おっさんだけど。

沖縄のミキ

沖縄には「ミキ」と呼ばれる飲み物があります。

大まかには細かく砕いた米に砂糖を加えて炊いたものを発酵させたもので甘いおかゆ(米の原型はないのでおかゆというよりも重湯?)みたいなものを想像してもらえればと思います。米以外にイモが入ってたりもするらしいです。

ペットボトルに詰められた自家製ミキ。南風原町。
これは那覇市松川の綱引きでもらったもの(旧6月15日前後の週末)

現在では公設市場あたりやスーパーなんかでも市販されていたりするのですが、もともとは稲の収穫祭であるウマチーという行事(旧6月15日)などで振るまわれる飲み物でした。

そんなミキですが、もともとは乙女が噛んだ米を材料にした口噛み酒だったらしいのです。そんな話はぼんやりと知ってたのですが、この前このミキを口噛みで作ったという人にインタビューを行った記事を発見しました。

ばあは口噛酒を造った~新垣カナさん(90歳)~(昭和55年2月26日)

もう記事のタイトルからしてすごいのですが、この記事は泡盛の情報を扱った「醸界飲料新聞」の1980年の記事で伊平屋島の我喜屋(がきや)という集落でその昔口噛みでミキを作っていたという当時90歳のおばあさんの話が載っています。


原材料、米。以上。

記事では具体的な作り方についても触れられているので、本日は実際に口噛みでミキを作ってみる、という話です。

 

レシピをもとに再現してみる

さて、まずは米を用意します。記事内では分量が明記されていなかったのでとりあえず適当に用意しました。コップに二つに分けておきます。

片方の米は水につけておきます。レシピでは2-3時間くらい浸米しておいた、と書かれていました。これは噛まずに後ほどミキサーで砕くやつです。


血圧が上がる

続いて米の口噛みです。記事では

まず、七、八人の美女で処女達が、歯ブラシのない当時だから塩で口中がただれる位い何度も洗い清めてから…

と書かれているのでとりあえず塩で口の中をキレイにします。そして、すみません。のっけから美女でも処女でもないですがそのあたりは大目に見てください。

続いて米を噛んでいきます。ここで「生米を噛むのかよ!」と思った方もいらっしゃると思います。

大ヒットした映画「君の名は。」でも口噛み酒を作るシーンが出てきており(しかしすみません。僕は見たことがないのです)、Yotubeなどで検証動画がたくさんアップされています。その時には炊いたご飯を噛んでいるので、生米を使うのはなんだか間違っているように思えますが…

後三時ごろから噛み始めてうす暗くなる頃までかかった。一人で三合~三合五勺の米をかんでいた。

記事では午後三時から3合の米を噛み始めて、終わったのは薄暗くなる頃。いくら丁寧に噛んだとしても炊いたご飯ではそこまで時間はかからないものと思われます。また、

ばあは十六才から二十才まで行事の度毎に噛んだというが、噛んだ翌日はあごが痛くて口もきけず、食事もできなかったという。手間賃もなく、ただ黙々と噛み続けたのだという。

とも書かれていることから、恐らく使われた米は生米。

ここを間違うと悲惨なことになるので、文献も調べてみたのですが沖縄のミキ作りについてまとめられた「沖縄の神酒」という論文にも沖縄のミキ作りには

飯を噛んで発酵させるか、水に漬けて柔らかくした生米を噛みそれを発酵させるか、米粉を煮てそれに柔らかくした生米を噛み入れて発酵させた

「沖縄の神酒」平敷令治 1973 沖縄国際大学文学部紀要 社会篇 1

と書かれているので生米を使うケースもあるようです。

というわけで、

生米を口に入れて

かみ砕いて

吐き出す。

これをひたすら繰り返します。噛んでいて気づいたのですが、長く噛みすぎると生米は細かくなりはするのですが、唾液とともに喉の奥に消えていって最終的に口の中には何も残りません。

ポイントとしてはある程度の大きさまで米を噛んで口の中に溢れた唾液と一緒に吐き出す感じがよさげです。

先の体験談で「噛んだ翌日はあごが痛くて口もきけず」というのがありましたが、確かにアゴが痛くなります。

上の写真が噛み終わった米です。わりとキレイだったのでそのまま載せましたがお食事中の方とかすみません!本当に。

続いては先ほど水に漬けておいた米を

細かく砕いていきます。

多分当時は石臼とかだと思うのですが、文明の力であるミキサーの力をかりました。

砕いた米に水を加えて(記事では分量が不明だったので目分量)、火にかけます。

火が通ると重湯みたいな状態になります。

火を止めて、先ほどの口噛みの米を加えて混ぜておきます。

一斗入りの木樽に入れ水を加えて晩六時頃から翌日午後五時ごろまでの約二十三時間位い置く

とあるので、翌日まで待ってみましょう。

 

ミキはできたのか

さて、翌日のミキの姿です。

ものすごい悪臭が立ちこめる、とかそんなことはありませんでしたが見た目に変化はほとんどありません。本当にできてるのでしょうか。

実際に味見をして確かめてみることにしましょう。

まずは匂いから。

…!僕の口から生み出されたものなのに、ほのかに爽やかな香りが漂います。これはヨーグルトの香り!!

さて、味の方は…

カルピス…!

砂糖は使っていないのに、ほのかな甘みと酸味。過程はさておき、かなりおいしいミキができあがりました。ぜひ、このミキをみんなにも飲んでもらいたかったのですが、なぜか事務所に誰も来なかったので僕だけで飲みました。

 

ばあ、僕にもミキができたよ


写真は汚い

というわけでレシピ通りに口噛みミキを作ってみる、という企画でしたが見事成功でした(成功したのに絵面が汚くなってしまうのはなぜでしょうか)。唯一頂けない点としてはおっさんが噛んで作ったミキは本人にしか需要がないという点でしょうか。まぁ美女だから需要があるとかそういう問題でもないと思いますが。

結構いい加減でもできそうなので、興味を持たれた方はぜひとも作ってみて下さい。生米を噛むときは口蓋に突き刺さる恐れがあるので、奥歯で噛むことをおすすめします。

ちなみに口噛みじゃないミキの作り方はクックパッドやネットに載っているので、そちらご覧下さい。

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