2019.12.06

外来種「ティラピア」が食用魚にならなかった理由を食べて考える

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沖縄の川に生息する外来種「ティラピア」。もともとは食用として持ち込まれた魚だが、なぜ食用として定着しなかったのか。獲って捌いて食べて考えてみる。

こんにちはjukuchonです。本日は外来種「ティラピア」のお話です。
以前ソルトガール仲本さんがファミチキ以外のホットスナックで魚は釣れるかという記事でも釣っていましたが、「ティラピア」は現在、沖縄のいたるところの川に生息しています。

そんなティラピアですが、『沖縄島の外来種ガイド(島津信彦氏著)』によると

現在沖縄に生息しているティラピアはモザンビークティラピア、ナイルティラピア、ジルティラピアの3種。しかしそれらが交雑しているので、実際どの種か見分けるのは困難になっています。モザンビークティラピアは1950年代に台湾から、ナイルティラピアは1970年代に内地から食用として、ジルティラピアはナイルティラピアに混入して持ち込まれた

とあります。そう、元々は食用にするために持ち込まれたのに、食用にはならず、しかし生命力が強いので沖縄の川に定着してしまったのです(ちなみに沖縄以外でも温排水の流れる温泉地などでも定着しているようです)。

もともと食用ということは食べたら美味しいのではないでしょうか。調べてみると、ティラピアは別名「イズミダイ」。味が鯛にそっくりでこの流通名がついたそう。しかもアジア各国では普通に食べられているとか。

前置きが長くなりましたが、今日はティラピアを食べてみたいと思います。
そしてなぜ沖縄で食用にならなかったか、また食用になっていたらどんな風に食卓に並んでいたのかまでを考えてみたいと思います。

ティラピアを生け捕る

やってきたのは湧水が直接川に注ぎ込む場所。
今回は捕まえることが目的ではなく食べることが目的。この湧水は夏になれば地元のこどもが水遊びする場所でもあるので、そんな場所で育ったティラピアなら食べても問題ないでしょう(おそらく)。


湧水が注ぐ川

釣ってもよかったのですが、夜の動きが緩慢になっているところを追い込み漁で捕まえることに。
せっかくなので5歳の息子と近所に住む友人ファミリーの子供たちも誘って一緒に追い込んできました。


カゴを持って追い込む息子

ものの10分でめちゃくちゃ獲れました。
この中からサイズの大きいものを数匹持って帰ることに。

 

調理しよう

追い込み漁で捕まえてきたティラピアです。
都心にいるティラピアはもっと真っ黒ですが、きれいな場所に生息するティラピアは皮も銀色できれいです。

もし沖縄で食用になっていたら、と考えて今回は
・魚汁
・バター焼き
・マース煮
・塩焼き
の普段沖縄で魚を食べるときに調理されがちな4品の料理を作ってみることに。

お友達のパパさん曰く「海で魚を釣って家で捌くことはあるけれど、子供たちは手伝ってはくれなかった。今回は自分で捕まえた魚だから恐る恐るでも自分から鱗をとると言ってくれてよかった」とのこと。

大人がビールで乾杯している間に、子供たちだけで、あーだこうだ言いながらウロコとりをしてくれていました。
図らずも良い食育になってきて、親としては嬉しい気持ち。

こどもたちがウロコ取りをしてくれたティラピアをさばきます。
背にあるトゲは刺さると痛いので注意しましょう。

捌いてみると身は白くてきれいです。

ティラピアは内臓部分に臭みがあるので、お腹の部分は開かずに身だけ外しました。
身はこのまま刺身にしたいところですが、淡水魚は寄生虫が怖いので加熱調理しましょう。

アラの部分はティラピアのアラ汁にします。

臭みが、といいつつアラ汁ばかり作っていても仕方ないので、腹を開きます。
身と違ってこちらは真っ黒。腹黒です。こっちから先にしていたら、ティラピア食べたくなくなっていたかもなと思いました。
なるべく内臓に傷をつけないように注意しながらハラワタを取り出しました。

姿のまま身にバツ印をつけて、塩を振って

魚焼きグリルにイン。ティラピアの塩焼きに。

先ほど取り外した身と、新たに内臓を取った1匹を塩こしょうと小麦粉でまぶして、

フライパンでじゅー。

3品目。バター焼きの完成です。

4品目は塩で煮たマース煮。

 

完全ティラピア食卓

というわけで、生け捕りから約2時間後に4品のティラピア沖縄料理が完成しました。

ティラピアのあら汁
ティラピアの塩焼き
ティラピアのバター焼き
ティラピアのマース煮

調理方法によってはちょっと躊躇しそうな見た目に。

さっそくみんなで食べてみます。

あ、美味しい。あ、これも。
味はまさしく鯛。箸でつかむとどれもホロっと骨からはずれる身の崩れ方、臭みもなく、ティラピア美味しいです。もっと残されたりするのかと思いきや、箸を動かす手がみんな止まりません。

 

どの料理が一番美味しかったか挙手してもらった

正直どれも美味しかったのですが、一番を決めるならどれ?ってことでみんなに挙手してもらいました。


マース煮のひとー?


あら汁のひとー?


バター焼きのひとー?

複数回手を挙げている子もいましたが、そこはご愛嬌で順位は

1位:あら汁
2位:マース煮
3位:バター焼き
4位:塩焼き

という結果に。あら汁は身のホロホロ具合がちょうどいい。マース煮は豆腐まで絶品になった。バター焼きも旨味が出てご飯が食べたくなる。塩焼きはサンマのようにワタまで食べられないけど、期待していなかった分意外に美味しいかった。など、さまざまな意見が出ました。ひとことで言えば全部美味しかったです。

 

なぜ食卓には定着しなかったのか

ここからは推測ですが、今回ティラピアを獲って調理するまでを行ってみて食用として定着しなかった理由を考えてみました。

1.汚い川でも生きるティラピア

理由の1つに、ティラピアが持ち込まれた当時の川がいまより汚染されていたこと。僕が子供の頃(1980年〜2000年ぐらい)の沖縄の川は養豚の糞尿や生活排水が垂れ流しされていて、決してきれいではありませんでした。その中で泳ぐティラピアを食べる気にはならなかったはず。これは昔よりはきれいになったとはいえ今の都心の川で捕まえたティラピアを食べたくないなと思う気持ちと共通しているはずです。
またそんな川で育ったティラピアは皮も黒くて食べたくない気持ちを助長させる原因になりそうです。

2.内臓が黒い

記事中にも書きましたが、ティラピアは内臓が黒い。きれいな場所で育った銀色の皮でも腹黒なのです。腹の色は環境とは無関係とはいえ、内臓が黒いものって食べるのが怖いだろうなと思うのです。

3.川魚を食べる習慣がない


写真は「ターイユ(フナ)シンジはどんな味なのか」より

海が近い沖縄では、食べる魚は海の魚のイメージ。川魚を食べることってほとんどないし抵抗があったのでは。

4.加熱すると皮が黒くなる


ティラピアのマース煮

食べたら美味しかったマース煮も、加熱したことで皮や顔が黒くなってちょっと怖い見た目に。

これらは予想ですが、ティラピアが食用として敬遠された理由になったのではないかなと思います。

 

食卓にティラピア

味はイズミダイという別名に相応しく美味しかったティラピア。
食べるかどうかは、きれいな川でとってくること、淡水魚なので刺身にはせずにしっかり加熱をすること、美味しそうな見た目の調理方法にすること(尾頭付にしないとか)、そして一番は個人の気持ちの持ちようでは、という気もします。
実際に大手のスーパーでも安い鯛かと思って買ったら「イズミダイ(ティラピア)」だったということもあるようなので、すでに食べたことがあった可能性も。

ということで、みなさんも機会があれば川で獲って食べてみてはどうでしょうか。減らそうぜ外来種(ただし自己責任でお願いします)。
しかし、我が家ではこれ以降、白身魚を食卓に出すと「やったー!ティラピアだ!」と言われるので、そこだけは失敗したかなと思っています。

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