2026.10.14

花ブロックを作る「山内コンクリートブロック」を訪ねて

沖縄ではおなじみの「花ブロック」。その歴史や情熱を、山内コンクリートブロックで聞いてきました。

沖縄の街を歩いていると、いたるところで目にする「花ブロック」。

住宅外壁の花ブロック
花ブロックマンション

住宅の塀やベランダ、屋上などに使われ、沖縄ではあまりにも見慣れた存在です。
そんな花ブロックを長年作り続けているのが、西原町にある山内コンクリートブロック。
花ブロックはいつから沖縄にあるのか。どうやって作られているのか。そして、これからも沖縄に残っていくのか。


社長の安里秋乃さんと、妹の安里由希さん

山内コンクリートブロックさんを訪ね、お父様である3代目から会社を引き継いだ、4代目社長の安里秋乃さんと、妹の安里由希さんにお話を聞いてきました。

花ブロックは沖縄生まれ?

――花ブロックは、もともと沖縄で生まれたものなのでしょうか?

(安里社長)花ブロック自体は沖縄発祥ではありません。アメリカには昔から同じようなブロックがあります。

(由希さん)私たち姉妹は花ブロックが大好きで、昔のアメリカ映画を見ていても、主人公より背景の建物が気になって、花ブロックを探してしまいます(笑)

――花ブロックはどうやって沖縄に入ってきたのでしょう?

(安里社長)戦前の沖縄には木造住宅が多くありましたが、戦争によってその多くがなくなりました。
戦後、米軍基地の建設とともにコンクリート建築の技術や機械が沖縄に入ってきました。
基地建設に携わった人たちは、そこでコンクリート建築の技術を教えてもらいます。基地建設が一段落した後は、その技術と機械を使って民間の住宅を建てるようになりました。花ブロックも、その流れの中で広がっていきました。


外人住宅に使われた花ブロック

なぜ「花ブロック」と呼ばれているのか

――そもそも、「花ブロック」という名称はアメリカでも同じなんでしょうか?

(由希さん)
アメリカでは「ポーラスブロック」や「ブリーズブロック」と呼ばれています。誰がいつ「花ブロック」と名付けたのかは、はっきりとは分かっていません。

沖縄の花ブロックの第一人者である建築家・仲座久雄さんの著書には、当時の職人さんたちが「花ブロック」と呼んでいたことが書かれています。

また、花ブロックについてフィールドワークをした先生が、穴が並ぶ模様が織物のように見えることから、「読谷山花織(ゆんたんざはなうい)」の「花」から取ったのではないかと研究されています。諸説ありますが、有力な説のひとつです。

仲座久雄さんは、戦後沖縄の建築を支えた建築家のひとり。現在の沖縄の花ブロックにつながる初期のデザインを考案し、建築に取り入れた人物です。1959年のカタログには「仲座考案」とされる7種類の花ブロックが掲載されています。


仲座久雄さんが考案した7種類の花ブロックと組み合わせた建物

――昔の花ブロックと今の花ブロックで、違うところはありますか?

(安里社長)
沖縄返還前は、アメリカの建築基準で建物を作っていたんです。
今は花ブロックを施工するとき、ブロックとブロックの間に鉄筋を入れないといけませんが、復帰前は積んでいるだけでも大丈夫でした。

そのため、昔はアーチ型にしたり、いろいろなパーツを組み合わせたり、今ではできないようなデザインもありました。

もともとは塀のいちばん上の部分などにポイントで使われることが多かった花ブロックですが、その後、屋上の水タンクを周りから見たときにきれいに隠すためにも使われるようになりました。

鉄筋が入っていない
もっとも古い形の花ブロック

花ブロックを作る会社が、沖縄で一社だけになった

コンクリート建築の普及とともに広がった花ブロック。かつては県内に花ブロックを作る会社が複数ありました。
しかし、20年ほど前から状況が変わっていったそうです。

(由希さん)
沖縄で住宅が十分に建って、コンクリート住宅の需要が以前ほどではなくなりました。それに伴って花ブロックの需要も減っていきました。
花ブロックを作る会社もだんだん少なくなって、15年ほど前には山内コンクリートブロックだけになりました。

このままでは花ブロックの文化そのものがなくなってしまうという危機感から、山内コンクリートブロックでは花ブロックを廃れさせないために、花ブロックだけを作る、花ブロックに特化した会社へ転換しました。

(安里社長)
ラスト1社として続けていましたが、産業組合の方などから「山内さんに何かあったら、花ブロックを作れる会社がなくなってしまう」という声が上がります。そこで、一度は花ブロックの製造をやめたもののノウハウが残っていた会社が、6種類ほどの花ブロックを再び作るようになりました。

現在、県内で作られている花ブロックは山内コンクリートブロックが約90%、もう一社が約10%を占めています。

県外で注目されて、沖縄に「逆輸入」

一度は需要が減っていった花ブロックですが、その後、再び注目されるようになります。

――いまでは新しい建物に花ブロックが使われているのを見ますが、需要が増え始めたきっかけは何だったのでしょう?

(安里社長)
東日本大震災もひとつのきっかけでした。津波で多くの木造住宅が流される中、残ったRC造の建物もあり、コンクリート造に注目する人が増えました。

また、沖縄に観光で来て花ブロックを見た県外の人が、新築する家に取り入れるようになりました。
沖縄では塀などに使われていたものが、県外では機能性というより「おしゃれなもの」として使われるようになったんです。
そうしたこだわりの家では、花ブロックを内装に取り入れたり、外壁全面に使ったりと、沖縄とはまた違った使い方もされていました。そうした住宅が建築雑誌で紹介されることも増えていきました。


花ブロックの使われ方も変わってきている

――沖縄では昔からあるものが、県外でおしゃれな建材として発見された。

(安里社長)
そうなんです。それを雑誌で見た沖縄の人が、改めて花ブロックの魅力に気づくようになりました。逆輸入みたいな感じですね。

花ブロックの魅力は?

(安里社長)
現在作っている花ブロックは100種類あります。花ブロックは、同じ柄を並べたり、違う柄を組み合わせたりすることで、一個で見たときとはまた違う模様が現れるところが魅力なんです。

同じ柄を回転させて使うこともできる
複数の柄を組み合わせてもおもしろい

なはーとでも、いろいろな柄を組み合わせた壁が採用されています。ひとつひとつは違う花ブロックなのに、組み合わせることで大きな模様になっていて、とても素敵です。


この壁は一度組んだ後にデザインと違うことがわかり、一度壊して作り直されたそうです

(安里社長)
あとは、隠すことと便利さが両立できるところも、私はすごく好きなんです。たとえば穴のところにハンガーをかけて洗った服を乾かしたりしますよね。
外からは見えないけれど、内側ではちゃんと使える。これこそ花ブロックの最大の魅力だと思っています。

表側は美しく
裏は便利に

作り方を全部見せても、同じものは作れない

――花ブロックは、沖縄でしか作れないものなのでしょうか?

(安里社長)
いいえ。今は県外にも同じようなブロックを作っている会社があります。
先代の社長は工場見学も受け入れていて、配合を聞かれたら教えるし、動画撮影もOKにしていたんです。

たぶん、教えたところで簡単には真似できないというくらい、技術に自信があったんだと思います。
結果的には、同じようなものを作る会社が県外にもできました。

ただ、山内コンクリートブロックでは手作業も加えて作っているので、細かな部分の精密さが違います。
これまで培ってきた経験もありますし、今も技術を向上させる取り組みを続けています。ここまで精密なものは、なかなか他では作れないという自負があります。


縦と横の立体的な重なりがすごい「いと」。通称は中島みゆきらしい

最近は、一個の花ブロックだけでも見せられるようなデザインも作っています。
たとえばハイビスカスやモンステラです。平面的な表現だけだった花ブロックに立体感や奥行き感を出すなど、新たなデザイン手法にもチャレンジしています。
ハイビスカスをモチーフにした花ブロックは、今帰仁村役場で実際に見ることができますよ。


会社のひんぷんとして使われていた花ブロック。ハイビスカスとモンステラもあります。

配合も工程も見せる。それでも同じものは作れない。
職人さんの中に匠がいるんですね、と聞くと「全員が匠です」という答えが返ってきました。

昔から人気の「角丸三日月型」「二重角型」

――たくさんある中で、人気のデザインはどれですか?

(安里社長)「角丸三日月型」と「二重角型」は昔から人気ですね。「これぞ花ブロック」というデザインです。


昔から人気の二大巨頭

そして最近人気なのが「あい」という花ブロックです。

この「あい」、穴の入り口は狭く、反対側に向かって広がっているのですが、形がおもしろいだけではなく、誕生から一般販売されるまでにも驚きの展開がありました。


「あい」一見普通の花ブロックだが

どうしてもこの花ブロックを家に使いたい

「あい」は、その名称にも使われていますが、もともと沖縄市にあった産婦人科を建築するときに、設計事務所から依頼を受けて作った花ブロックだったそうです。なんとなくぼかした表現なのは、産婦人科にいろいろあったからで察していただければ幸いです。

(安里社長)
「あい」はパンフレットにも表裏の表記があるんですが、この建物では「裏」としている側が道路側を向いているんです。私たちも最初に見たときは、「こっちを表にするんだ」と驚きました。

でも、この向きにすると、道路側の穴の入り口は狭く、室内側に向かって広がります。そのため外からの視線は遮りながら、入ってきた光は室内側で広がるんです。室内にはいろいろな方向から光が差し込んで、すごくきれいなんです。


某産婦人科時代

――外から見てもおしゃれな建物ですが、中もすごいんですね。

(安里社長)
そうです。完成した建物を見た方や、診察に行った方なのか、「このブロックを我が家でも使って建てたい」という問い合わせがたくさんありました。でも、当初は意匠の関係で販売することができませんでした。
すると、どうしても使いたいというお客さんが設計した設計事務所を自分で調べて、「山内さんから買えるように許可してほしい」と直接お願いすることもあったそうです。
話し合いの結果、建築から3年後に販売の許可をもらうことができました。今でもすごく人気があります。

欲しい人が設計者を探し出して、販売できるよう直談判。
花ブロックが単なる建材ではなく、デザインとして愛されていることがよくわかる話です。

花ブロックはどうやって作られる?

(由希さん)
花ブロックは型枠にセメントや海砂、砕砂、混和剤、水を混ぜた材料を入れ、振動を加えます。振動させることで材料を締め固め、型のすみずみまで行き渡らせます。
その後、型からブロックを抜きます。型から抜いた時点で、一個18.5kgくらいあります。

作った翌日には手で持てるくらいには固まります。その後、室内で自然乾燥させて、だいたい1週間くらいで建築材料として使えるようになります。

――1日にどれぐらい作れるんですか?

(安里社長)
機械は4台あり、それぞれに型枠をセットします。型には、ブロックの大きさによって1個ずつ作るもののほか、2個、4個を一緒に作れるものもあります。
1個ずつ作る型なら、1日に120〜150個ほど。2個、4個を一度に作れるものなら、その分だけ数も増えます。
ただ、ブロックの大きさやデザインの複雑さによっても時間は変わります。

――花ブロック作りに向いている季節はあるんですか?

(由希さん)
梅雨時期は作りやすいです。
セメントは乾燥して固まるのではなく、水と反応して固まります。なので冬の乾燥している時期には、水をかけることもあります。

――オリジナルデザインの花ブロックを作ることもできますか?

(安里社長)
できます。ただ、まず型から作らないといけません。
材料を入れて振動を加えても壊れないくらい頑丈な型なので、型だけでも100〜200kgのものが必要です。
なので、ホテルや公共施設などの建築でオリジナルの依頼を受けることはありますが、金額的にも個人が手軽に作れるものではないですね。


宮古島で建設されるホテルで使われる予定のオリジナルデザイン

今後の花ブロック

――既存の花ブロックなら、個人でも購入できますか?

(安里社長)
もちろんです。県内ならホームセンターでも売っています。ただ、置ける数や種類には限りがあるので、直接工場に買いに来てもらっても大丈夫です。県外発送もできます。

県外から、年に一回くらい飛行機に乗って、スーツケースを持って買いに来てくれるお客さんもいますよ。

――え、まさかの持ち帰りですか?

(由希さん)
空のスーツケースを持って、それに花ブロックを入れて持って帰られます。
毎回違うデザインを買っていかれますよ。会社に来る前に電話をいただくんですが、デザインを指定して買われるので、沖縄を観光しているときにどれにしようか探しているのかもしれませんね。

県外発送も可能なので持ち帰らなくてもいいはずですが、花ブロックが愛おしくてしょうがないのかもしれませんね。

――花ブロックって、どれくらいもつものなんですか?

(由希さん)
何もしない状態でも40年くらいはもちます。手入れをすれば、もっと長く使えます。
雨風にさらされることでカビが入ったり、経年劣化したりするので、長くきれいに使うなら塗装するといいです。
最初に塗って、その後は20年ごとくらいに塗れば大丈夫です。色を付けたくなければクリアでも塗れます。
20年経ったら違う色に塗ってもいいですよ。気分も変わると思います。

――花ブロックを、これからどうしていきたいですか?

(安里社長)
これからはグッズ展開にも力を入れていきたいと思っています。
沖縄には花ブロックがどこにでもあります。でも、見慣れすぎていて意識しないことも多いですよね。
グッズにすることで、「沖縄にはこういう文化がある」ということを知ってもらって、花ブロックの文化を広め、残していきたいと思っています。

ポロシャツ
コースター

当たり前にある花ブロックを、これからも残すために

山内コンクリートブロックの安里社長と由希さん、お時間をいただきありがとうございました!
一度は県内で花ブロックを作る最後の1社となり、「このままでは花ブロックがなくなってしまうかもしれない」という危機感から、花ブロックに特化する道を選んだ山内コンクリートブロック。

昔ながらのデザインを作り続けながら、新しい花ブロックにも挑戦し、今度はグッズを通して花ブロックそのものを知ってもらおうとしています。

「花ブロックの文化を、これからも残していきたい」と話す安里社長。

沖縄では、あまりにも当たり前にある花ブロック。
でも、その当たり前は、作り続ける人の情熱と愛があってこそ残っていくものなのだと思いました。


花ブロック愛にあふれたおふたり。これからも応援しています!

山内コンクリートブロック

沖縄県中頭郡西原町小那覇1184-1
https://www.yamauchi-cb.jp/

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