2022.10.27

【連載】ハブでも分かる!?遺老説伝 Vol.49 神文の水

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1740年代に琉球王国の歴史書として編纂された『球陽』の外巻である『遺老説伝(いろうせつでん)』。首里政府が各地に命を出して集めたとされるその内容を、漫画でゆるく描き下してみるという連載です。

ハブでも分かる!?遺老説伝

『ハブでも分かる!?遺老説伝』とは

『遺老説伝(いろうせつでん)』は1743年から1745年にかけて琉球王国の正史として編纂された『球陽(きゅうよう)』の外巻で、各地の御嶽や行事の由来、珍しい出来事などを首里政府が各地に命令を出して集めたものとされています。

当連載『ハブでも分かる!?遺老説伝』は、"ハブでも分かる" をコンセプトに、原文(漢文)をそのまま読み解くには難解すぎる『遺老説伝』を、沖縄出身の漫画家・吉元あきこが漫画で描き下してみる、という試みです。ただ、本当にハブでも分かるかどうかはハブのみぞ知るので悪しからず。

*当連載の内容はすべて史実というわけではなく、フィクションが大いに含まれていますのでご了承ください。

第49回『神文の水』

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神文の水

むかしむかし、宮中で行はれた札式ですが、王様の御即位はかならず、吉日をえらんで諸臣下を王城の御殿にお召しになり、国中の男女を獄所(平等所、番所等の役所)に集めました。
まず神仕(かみつかえ)の役目の者に、祭文をとなえさせてから、ウロンの灰水(俗にコーノフエーといって線香の灰の氷)を飲ましました。
中昔からは、王様が御位におつきになりますと吉日をえらんで多くの臣下を護国寺(那覇波之上)にお召しになって、神様に誓った神文を焼いた灰を水にいれて飲ましました。
これを「神文の水」といって、各間切、村々にも御使に持たせて、人民に飲ませ、いつまでも忠節を守り、決して二心を持つことのないように誓(ちか)はされました。
註「神文の水」、主権者に対する誓約の意を表す古代からの儀式であったが、護国寺で神水を与えたとあるのは、同寺が西暦一三八四年の創建であるから察度王時代以後のことであろう。その儀式は一八四八年尚泰王即位まで四五〇年余続けられていたのである。

『琉球民話集 全巻 球陽外巻遺老説伝口語訳』 P5-6より
琉球史料研究会編(1963年)

首里城の火災からもうすぐ3年。今回はかつて首里城内で行われていた神事についてのお話です。
国王に対する忠義を表すためとはいえ、当時はなかなかすごいものを飲ませていたようですね。
お話の中に出てくる那覇市波の上にある護国寺。境内には十二支すべての守り本尊が祀られています。
ちなみに奥武山公園内にあるのは「護国神社」で、名前が似ていて間違いやすいのでご注意を。

<バックナンバー>
プロローグ『クバとハナ』/第1回『那覇という地名の由来』
第2回『田芋のふるさと』
第3回『天久宮の伝説・前編』
第4回『天久宮の伝説・中編』
第5回『天久宮の伝説・後編』
第6回『辺戸の星窪』
第7回『羽地祝女』
第8回『邑(ムラ)を作った兄弟・前編』
第9回『邑(ムラ)を作った兄弟・後編』
第10回『神々の遊び』
第11回『貫玉』
第12回『普天間宮の伝説-1』
第13回『普天間宮の伝説-2』
第14回『普天間宮の伝説-3』
第15回『普天間宮の伝説-4』
第16回『普天間宮の伝説-5』
第17回『西表島の祖納堂』
第18回『水の恨み・前編』
第19回『水の恨み・後編』
第20回『御水マラソン』
第21回『おもろそうし』
第22回『睡虫次良・前編』
第23回『睡虫次良・後編』
第24回『時双紙』
第25回『城殿』
第26回『夫人の仇討ち-1』
第27回『夫人の仇討ち-2』
第28回『夫人の仇討ち-3』
第29回『夫人の仇討ち-4・完』
第30回『進貢船』
第31回『樽良知(たらーち)と大里鬼(うふざとうに)-1』
第32回『樽良知(たらーち)と大里鬼(うふざとうに)-2』
第33回『樽良知(たらーち)と大里鬼(うふざとうに)-3』
第34回『恐ろしい報い』
第35回『宝剣 千代金丸-1』
第36回『宝剣 千代金丸-2』
第37回『宝剣 千代金丸-3』
第38回『宝剣 千代金丸-4』
第39回『宝剣 千代金丸-5』
第40回『宝剣 大昔の世』
第41回『津波を防ぐ方法-1』
第42回『津波を防ぐ方法-2』
第43回『津波を防ぐ方法-3』
第44回『世誇宮』
第45回『平和の神-1』
第46回『平和の神-2』
第47回『淵の幽霊船-1』
第48回『淵の幽霊船-2』
第49回『神文の水』
第50回『安里神社-1』
第51回『安里神社-2』
第52回『安里神社-3』
第53回『亜佳渡前』
第54回『寺織名-1』
第55回『寺織名-2』
第56回『寺織名-3』
第57回『平松』
第58回『鄭大夫岩-1』
第59回『鄭大夫岩-2』
第60回『女傑諸樽-1』
第61回『女傑諸樽-2』
第62回『博打屋』
第63回『黄金の瓜子-1』
第64回『黄金の瓜子-2』
第65回『黄金の瓜子-3』
第66回『黄金の瓜子-4』

ゲストライター

吉元あきこ
沖縄で生まれ育ち、京都の芸術大学を卒業。地元を愛し、沖縄マンガを描くことを生業としています。Twitterで作品を公開中です。
実はキジムナーに会ったことがあるのが自慢ですが、よく覚えていないことが残念。
好物はジミーのアップルパイ。
ワラビーにて「5年1組 でいご通信」連載中。
twitter:https://twitter.com/8dydpxGguooAzWM
BLOG:ありんくりん書房
Youtubeチャンネル:ウミナイビ城 / Uminaibi Gushiku
フリーイラスト素材:イラストAC

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