2022.09.01

【連載】ハブでも分かる!?遺老説伝 Vol.47 淵の幽霊船-1

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1740年代に琉球王国の歴史書として編纂された『球陽』の外巻である『遺老説伝(いろうせつでん)』。首里政府が各地に命を出して集めたとされるその内容を、漫画でゆるく描き下してみるという連載です。

ハブでも分かる!?遺老説伝

『ハブでも分かる!?遺老説伝』とは

『遺老説伝(いろうせつでん)』は1743年から1745年にかけて琉球王国の正史として編纂された『球陽(きゅうよう)』の外巻で、各地の御嶽や行事の由来、珍しい出来事などを首里政府が各地に命令を出して集めたものとされています。

当連載『ハブでも分かる!?遺老説伝』は、"ハブでも分かる" をコンセプトに、原文(漢文)をそのまま読み解くには難解すぎる『遺老説伝』を、沖縄出身の漫画家・吉元あきこが漫画で描き下してみる、という試みです。ただ、本当にハブでも分かるかどうかはハブのみぞ知るので悪しからず。

*当連載の内容はすべて史実というわけではなく、フィクションが大いに含まれていますのでご了承ください。

第47回『淵の幽霊船-1』

47.jpg

淵の幽霊船

与那城には、一つの恐ろしい深い淵(海中の渦巻き)があって、底の深さは見るのさえ気味悪く、渡舟がそこを通る時は何時も戦々怯々(せんせんきょうきょう)として生きた心地もないとのことです。
左右は獄があって、その辺に畑があるので、安勢理、饒辺、屋慶名三村の百姓は、舟でそこに渡って耕作をし、薪取りしているので毎日のように其の淵を渡るのです。
そこを渡る時には、その徒(おきて)があって、もしその徒を守らない者が一人でもいると、海水が見る見るうちに高くなり、大波が立って舟をやることが出来ません。
それが幾度となくあってからは、今では必ず淵を渡る淀を守るそうです。
その徒というのは、淵を通る時、頭布(ずきん)をはずし、襟を正し、ひざまずき、一言もロをきかないことだそうです。
不思議なことに、両方の獄の頂から光輝(ひかり)が天に上ることもあれば、天から降ることもあり、これも昔から今まで、幾度となく目撃(もくげき)したとのことです。

『琉球民話集 全巻 球陽外巻遺老説伝口語訳』 P230-231より
琉球史料研究会編(1963年)

夏の終りにぴったりのちょっぴり涼しくなるお話です。
物語の舞台である「与那城(よなしろ)」とは、現在のうるま市にあり勝連半島の海中道路のすぐ近くあたりの地域です。文中に出てくる安勢理、饒波などのいくつかの地名と、左右に嶽がある、ということから地図を調べてみると、藪地島のあたりが細い水路になっているので、もしかしたらここなのかな?と思いましたがはっきりとした場所は特定できませんでした。
今でも幽霊船が出るかもしれない?与那城の深い淵、ちょっと怖いけどのぞいてみたいですね。

<バックナンバー>
プロローグ『クバとハナ』/第1回『那覇という地名の由来』
第2回『田芋のふるさと』
第3回『天久宮の伝説・前編』
第4回『天久宮の伝説・中編』
第5回『天久宮の伝説・後編』
第6回『辺戸の星窪』
第7回『羽地祝女』
第8回『邑(ムラ)を作った兄弟・前編』
第9回『邑(ムラ)を作った兄弟・後編』
第10回『神々の遊び』
第11回『貫玉』
第12回『普天間宮の伝説-1』
第13回『普天間宮の伝説-2』
第14回『普天間宮の伝説-3』
第15回『普天間宮の伝説-4』
第16回『普天間宮の伝説-5』
第17回『西表島の祖納堂』
第18回『水の恨み・前編』
第19回『水の恨み・後編』
第20回『御水マラソン』
第21回『おもろそうし』
第22回『睡虫次良・前編』
第23回『睡虫次良・後編』
第24回『時双紙』
第25回『城殿』
第26回『夫人の仇討ち-1』
第27回『夫人の仇討ち-2』
第28回『夫人の仇討ち-3』
第29回『夫人の仇討ち-4・完』
第30回『進貢船』
第31回『樽良知(たらーち)と大里鬼(うふざとうに)-1』
第32回『樽良知(たらーち)と大里鬼(うふざとうに)-2』
第33回『樽良知(たらーち)と大里鬼(うふざとうに)-3』
第34回『恐ろしい報い』
第35回『宝剣 千代金丸-1』
第36回『宝剣 千代金丸-2』
第37回『宝剣 千代金丸-3』
第38回『宝剣 千代金丸-4』
第39回『宝剣 千代金丸-5』
第40回『宝剣 大昔の世』
第41回『津波を防ぐ方法-1』
第42回『津波を防ぐ方法-2』
第43回『津波を防ぐ方法-3』
第44回『世誇宮』
第45回『平和の神-1』
第46回『平和の神-2』
第47回『淵の幽霊船-1』
第48回『淵の幽霊船-2』
第49回『神文の水』
第50回『安里神社-1』
第51回『安里神社-2』
第52回『安里神社-3』
第53回『亜佳渡前』
第54回『寺織名-1』
第55回『寺織名-2』
第56回『寺織名-3』
第57回『平松』
第58回『鄭大夫岩-1』
第59回『鄭大夫岩-2』
第60回『女傑諸樽-1』
第61回『女傑諸樽-2』
第62回『博打屋』
第63回『黄金の瓜子-1』
第64回『黄金の瓜子-2』
第65回『黄金の瓜子-3』
第66回『黄金の瓜子-4』

ゲストライター

吉元あきこ
沖縄で生まれ育ち、京都の芸術大学を卒業。地元を愛し、沖縄マンガを描くことを生業としています。Twitterで作品を公開中です。
実はキジムナーに会ったことがあるのが自慢ですが、よく覚えていないことが残念。
好物はジミーのアップルパイ。
ワラビーにて「5年1組 でいご通信」連載中。
twitter:https://twitter.com/8dydpxGguooAzWM
BLOG:ありんくりん書房
Youtubeチャンネル:ウミナイビ城 / Uminaibi Gushiku
フリーイラスト素材:イラストAC

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